英国出身でカナダ・モントリオール大のジェームズ・メイナード博士(左)と、米カリフォルニア大のテレンス・タオ教授
1とその数自身以外では割り切れない2以上の自然数「素数」が、どのような間隔で分布するかに関する新たな定理を米英の2人の数学者が26日までに見つけた。
数学者からは「教科書を書き換える」との声も上がる成果。素数は小学校でも習う基本的な数だが、謎も多い。新定理の結論は理解しやすい内容で、幅広い関心を集めそうだ。
数が大きくなると、素数はまばらにしか見つからない。1~100の100個の中には2、3、5など素数は25個あるが、同じ100個でも、10万1~10万100には素数は6個しかない。では数が大きくなると、素数の間隔は際限なく離れていくのか。新定理は「そんなことはない」と否定する結果を示した。
数学者の本橋洋一博士(素数分布論)は「素数が極端に偏ることなく分布するという数学の大予想があり、その初の証拠と言えるのではないか」と説明する。
新定理は、英国出身でカナダ・モントリオール大のジェームズ・メイナード博士(26)と、米カリフォルニア大のテレンス・タオ教授(38)がそれぞれ独自に見つけた。
例えば、ある素数と次に大きい素数の2個を考える。19なら次は23で、19~23の5個の中に2個の素数がある。だが数が大きくなっても、5個の自然数が並んだ中に素数が2個あるかは分からない。
新定理では、どんな大きな数でも、600個ごとに区切ると素数が2個含まれる場合があると分かった。必ず2個あるわけではないが、2個の素数が含まれる600個ごとの区間は無限に存在する。今後の研究で、区間の幅はもっと狭まる可能性があるが、現時点では600が最小の幅という。
次のようなイメージだ。ある大きな数nを例に考える。n、n+1、n+2…、n+1000…、n+2000…と順番に大きくなる数字を書いた札を作り、600個ずつ同じ箱に入れる。すると、全ての箱に2個の素数が入るとは限らないが、素数2個が入った箱は無限にあることになる。
素数が3個だと、区間の幅は39万5122個になる。理論的には何個の素数でも、必要な区間の幅は計算でき、素数の分布について理解が非常に深まった。
本橋博士は新定理について「素晴らしいひらめきがないと絶対に気づかない。夢のような成果だ」と話している。