
アルツハイマー病の新薬が米国で承認されたことを受け、県内の認知症患者や家族を支える団体関係者から「画期的。日本でも承認を」と期待の声が上がった。新型コロナウイルス禍で在宅時間が増えたことなどから、認知症に関する相談件数は急増しており「初期症状に気付き、不安を抱える家族には朗報」と歓迎した。一方、新薬は高額なため広く利用が進むか懸念も聞かれた。
認知症の患者や家族を支援する公益社団法人「認知症の人と家族の会千葉県支部」の広岡成子副代表(72)は「これまでの薬は進行を抑えるもので、(患者)本人や家族は早く治療薬が欲しいという思いだった。画期的で期待は大きいと思う。日本でもしっかりと審査した上で承認してほしい」と願った。
広岡副代表によると、新薬については昨年ごろから関係者の間で注目され、期待が寄せられていた。進行を抑制する現在の薬が日本で承認される前は、海外から個人輸入する人もいたといい、認知症薬への関心は高い。同支部は、県と千葉市から「ちば認知症相談コールセンター」の事業を受託しており、普段から薬についての問い合わせもあるという。
新型コロナウイルス禍は認知症の相談にも影響。同センターが受けた相談件数は、2017~19年度は700件台で推移していたが、2020年度は約1千件に増加した。新型コロナ流行に伴う在宅ワーク推進や外出自粛で自宅にいる時間が増え、家族の症状に気付いたり、介護施設のデイサービスや面会が休止したりして相談が相次いだとみられる。
「在宅ワークで家族の初期症状に気付く人もいる。(新薬は)初期に効くという話しなので、不安に思っている方には朗報」と広岡副代表。ただ、新薬の価格は約610万円とされており、「できたばかりでコストが高く、誰もが使えるかは分からない」という懸念もある。新薬の日本での承認や保険適用など認知症対策の進展に期待を寄せた。