なお慎重に行動変容を コロナ禍を克服するための戦略1 国際医療福祉大学成田病院感染制御部部長 松本哲哉 【医療現場から コロナ禍の羅針盤 情報提供とアドバイス】(7)

 2019年に中国に端を発する新型コロナウイルス感染症はパンデミックによって世界規模の感染となり、21年10月末時点において国内ではすでに感染者数は172万人に達し、死亡者は1万8千人を超えました。これまで何度も感染流行の波が起こる度に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発出され、国民も長期間、我慢を強いられる生活が続いてきました。

 コロナ患者の急増は医療体制の逼迫(ひっぱく)を招き、特に第5波は医療機関の受け入れ困難事例が増加し、全国で自宅療養中にお亡くなりになる方が21年8月はこれまでで最多の250人に上りました。

 私が勤務している成田病院においても自宅療養中に状態が悪化して外来や入院の対応依頼が続く深刻な状況でした。さらに千葉県において新型コロナウイルスに感染した妊婦が自宅で出産し早産であったため赤ちゃんが死亡する事例があり、社会に大きな衝撃を与えました。

 このように感染の流行が起これば医療が逼迫するだけでなく、感染して自宅で苦しむ人が増加するなど厳しい状況に陥る可能性が高くなります。

 幸い9月に入って感染者数は急激に減少し、政府は緊急事態宣言およびまん延防止等重点措置の全面解除を決定しました。感染者が減ったことで多くの人たちは安心感を感じ、さらに緊急事態宣言が解除されたことで行動が活発になり、人々の接触の頻度は必然的に高まると予想されます。そうなると、懸念されるのは次の感染拡大、すなわち第6波が早く来てしまうのではないかという点です。今後、宣言解除後に感染をある程度のレベルに抑えながら、どのように生活を戻していけるかが今度の課題だと考えます。

 これまで、緊急事態宣言の主なターゲットは飲食でした。飲食店の営業時間の短縮や酒類の提供禁止の要請など、飲食店や酒屋にとってはかなり厳しい方針でした。感染経路の主体が家庭内感染や職場内感染になっても、飲食の制限にこだわり続けたため、効果は限定的であるにもかかわらず多くの犠牲を伴った政策だったと考えます。

 すでに全国民のワクチン接種率は70%を超え、ワクチン接種完了者や検査陰性者は飲食やイベントへの参加を優遇するなど、ワクチンと検査のパッケージによる経済活動の活性化が計画されています。すでに同様の取り組みが海外でも取り入れられてきており、この対応は国内でも広がると考えられます。

 ただし、ワクチン接種後でもブレイクスルー感染が起こる可能性があり、検査は精度の問題があるため、パッケージで運用すれば大丈夫というお墨付きを与えられるわけではありません。今後、感染のリスクをゼロにすることはできなくても、なるべく減らした上で社会活動を認めていくという考え方が妥当なのでしょう。

 今後、ワクチンの接種率がさらに高まり、内服の治療薬が開発され、医療体制がさらに拡充されれば、感染の流行が起こっても重症者は出にくく、医療の逼迫も起こりにくい社会になるでしょう。ただし、やはり年内はまだ安心できる状況まで到達するのは難しく、それまでは個人個人が感染対策に配慮しながら、慎重に行動を変えていく必要があります。


  • LINEで送る