
京葉線の新習志野駅から西に向かい、船橋市に入ると京葉食品コンビナートエリアです。中でもひときわ大きいのがサッポロビール千葉工場です。その敷地に沿って船橋港南岸壁に出ると、オレンジ色+クリーム色の大きな船が係留されています。船体には「SHIRASE5002しらせ」と書かれています。
この船は、かつて日本の南極観測を支えた3代目南極観測船(砕氷艦)「しらせ」だった船です。全長134メートル、全幅28メートルの大きさがあります。船体の「5002」は当時の艦番号「AGB-5002」の数字です。1982年11月の就役から2008年7月に退役して「2代目しらせ」に引き継ぐまでに、日本と南極の間を25回往復しました。この回数は歴代の南極観測船の中で最多です。
退役後、多額の維持費用がかかるために引き取り手がつかず、一度はスクラップにすることが決定されました。しかし、気象情報会社ウェザーニューズ社を創業した石橋博良氏がしらせ後利用再審議を提案し、公募・審議の結果、09年11月にウェザーニューズ社が後利用先に決まりました。
船名もSHIRASEに改称され、改修の後、船橋港に曳(えい)航されて「南極観測の文化やチャレンジ精神を伝える」という考えの下、環境情報発信基地として10年5月に一般公開が開始しました。13年9月に所有権が一般財団法人WNI気象文化創造センターに移転し、現在に至ります。
SHIRASEでは、週2回の見学会の他、「チャレンジングSHIRASE」という年5回のイベントも行っています。見学会はサッポロビール千葉工場との共同見学(所要時間2時間20分)の形を取るコースもあります。現在はコロナ対策でこれらは中止されています。早い再開が望まれます。また、利用主旨に応じて映画の撮影や研修会なども受け入れています。
SHIRASEは日本フローティングシップ協会の一員です。「フローティングシップ」とは、水上に浮かべて係留して保存・公開している歴史的に価値のある船のことです。
SHIRASEの他には、開陽丸青少年センター(北海道江差町)、函館市青函連絡船記念館摩周丸(函館市)、慶長遣欧使節船サン・ファン・バウティスタ(宮城県石巻市)、帆船海王丸(富山県射水市)、初代南極観測船宗谷(品川区)、帆船日本丸(横浜市)、日本郵船氷川丸(横浜市)、南極観測船ふじ(名古屋市)の8船です。どの船も歴史の学習などで聞いたことがあるのではないでしょうか。
南極観測船から「環境のシンボル」へと大きく役割を変えましたが、SHIRASEは日本が誇るべき船であり、今後もその活用を積極的に図っていきたいものです。現在、見学やイベントは「当面の間、休止中」となっています。早く再開され、多くの人がSHIRASEを来訪できることを願っています。
(横芝小学校長 佐瀬一生)