花火駆使の壮大な舞台 水面と山、幻想巡る物語 TDS水上ショー×現代野外劇 【夢の国から探る「和」TDR比較日本文化論】(中)

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TDSの「ファンタズミック!」(オリエンタルランド提供)
TDSの「ファンタズミック!」(オリエンタルランド提供)
利賀芸術公園の「世界の果てからこんにちは」(劇団SCOT提供)
利賀芸術公園の「世界の果てからこんにちは」(劇団SCOT提供)

 東京ディズニーシー(TDS)で連日公演される夜の水上ショー「ファンタズミック!」は、ファンタジーの世界を創造していくミッキーマウスの物語が、花火やレーザー光線、炎などさまざまな特殊効果とともに展開される壮大なエンターテインメントだ。

 上演場所の「メディテレーニアンハーバー」は、中央にショーの船が乗り入れる広大な海があり、手前は舞台や客席にもなる広場、背後には実際に火を噴く火山がそびえる。公演中、火山を含めたエリア全体が巨大な野外劇場と化す。

 TDSと似通った野外劇場が富山県の山奥に実在する。南砺市利賀村にある利賀芸術公園の野外劇場だ。手前に古代ギリシャ風の客席、中央の池にせり出すように舞台が造られ、緑豊かな山々が借景として利用される。両者とも客席から舞台を眺めると、水面に浮かぶように演者が物語を繰り広げ、視線の先に壮大な山が立ち現れる。

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 劇場構造だけでなく、ショーの内容・演出にも類似点を見いだせる。利賀芸術公園は、世界的演出家・鈴木忠志が主宰する劇団SCOTが長年拠点とし、毎夏の演劇祭ではシェークスピアやギリシャ悲劇など硬派な演劇が上演される。

 とりわけ人気で毎年野外劇場で上演されるのが、1991年初演の「世界の果てからこんにちは」。物語の進行に合わせ、多種多様な花火が打ち上がるショー形式の舞台で、見た目の華やかさから多くの観客を引きつけている。

 一方で物語は、日本を巡るさまざまな文章や歌謡曲を引用しながら「日本とは何か」を問う批評的な内容だ。鈴木は「現在のわれわれには日本という言葉から感じる共有のアイデンティティーはない」と考え、こうした「日本という幻想」を明らかにしようと舞台を構成・演出する。

 「ファンタズミック!」と「世界の-」は、花火を駆使した壮大な野外劇であり、ファンタジー=幻想を巡る物語でもある。ただし、かたや夢の国で繰り広げられるすてきな物語、かたや日本という国の幻想性を暴き出す手厳しい物語という違いはあるが。

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 TDSは東京という大都市に隣接する浦安市にあり、利賀芸術公園は富山駅から細い山道を車で1時間かけてたどり着く、人口約500人の山村にある。

 鈴木は76年に東京から利賀村に拠点を移した。文化の東京一極集中を改め、地方から新たな文化を発信するためだ。利賀村の人口は減り続けるが、鈴木のもくろみは着々と根付きつつあり、来夏には鈴木が芸術監督を務め、世界の名だたる演出家が演劇を上演する「第9回シアター・オリンピックス」が開催予定だ。

 両者は交通アクセスで対極にあり、上演される物語の方向性も異なる。だが、遠く離れた二つの野外劇場が似通った形を持ち、どちらも極めて優れたショーを上演し続けていることは、観客にとって幸せな暗合と言えるだろう。

(敬称略)

(市川支局・中島悠平)