治療法なく倒木も 幹えぐれ商品価値激減 【ちば沈黙の病 蝕まれるブランド杉】(上)

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昨年度の調査結果で倒木の危険性が高いサンブスギ約100本を伐採した=千葉市緑区の昭和の森
昨年度の調査結果で倒木の危険性が高いサンブスギ約100本を伐採した=千葉市緑区の昭和の森
「溝腐病」に罹患(りかん)すると幹に大きく溝ができる
「溝腐病」に罹患(りかん)すると幹に大きく溝ができる

 建築用木材などに使用される千葉県産のブランド杉「サンブスギ」がいま、深刻な問題を抱えている。幹を見ると、えぐられたような大きなくぼみ。幹を徐々に腐朽させる「スギ非赤枯性溝腐(みぞくされ)病」の特徴だ。人体に影響はないが感染した杉は材木としての価値は下がり、倒木の危険性もある。千葉市内の杉林の約70%が被害に遭っており、感染すると治ることはない。“沈黙の病”に静かに蝕(むしば)まれていくブランド杉に迫った。

◆挿し木でまん延

 サンブスギは真っすぐに成長する常緑針葉樹。色合いも良く切断面がきれいな円形になる。戦後、県の推奨を受け、市内でも多くの林業者が植樹を進めてきたが1960年に茨城県で初めて溝腐病が確認され事態は一変した。

 同病に感染すると幹が縦方向に溝を作りいびつに変形。材木としての商品価値が下がるだけでなく“患部”から腐ってしまい倒れる危険性がある。

 長い年月をかけて進行する同病。親木の枝を切り取り土に植えて繁殖させる「挿し木」という方法をとるサンブスギにとって致命的な病だった。初期段階では親木への感染を確認できないため、実は感染していた親木から病気を受け継いだ“子孫たち”が爆発的に広まった。また、健康な木でも手入れが行き届かなかった枯れ枝から菌が侵入し、感染することもある。治す手だてはなく、伐採しか道はない。

◆昭和の森に異変

 市の公園でも被害が深刻だ。豊かな自然を誇る市内最大規模の総合公園「昭和の森」(緑区)で感染が確認された。

 昨年度に樹木医が行った調査では、園内から抽出したエリアの樹木932本のうち87・3%に当たる814本が感染。そのうち病気が進行している伐採対象樹木は521本だった。感染していないのは118本にとどまった。同園は調査結果から、園内全体でも樹木の8割超が感染していると推定。同園によると園内の杉は約5万本にのぼる。

 同園は伐採対象となった樹木のうち、広場などに面した特に緊急性の高い危険な杉41本を約54万円をかけて伐採。安全性は確保されたという。

 昭和の森担当者は、伐採しか残されていない現状に「できることなら助けてやりたいが…」と肩を落とす。今後も園内の人通りが多い場所や民家近辺を中心に溝腐病の調査を続けていく予定だ。伐採跡地には「針葉樹だけではなく、利用者が季節を楽しめるように落葉樹を中心に時間をかけて植栽していきたい」と前向きに話した。

◆市内70%が感染

 県が95年に行った溝腐病の調査では、市全域の杉林計約450ヘクタールのうち約70%で感染が発覚。県全域(計約7700ヘクタール)の平均約55%に対し、千葉市の割合は高い。県は昨年度も調査を実施。結果は依然集計中だが、県森林課は「(市の被害は)95年の結果よりも拡大している」と推測している。市は病気の拡大を受け、約20年前からサンブスギの伐採と運搬に関して補助制度を設けている。

 若葉区の緑豊かな「泉自然公園」では今年、「野鳥の森エリア」の約0・8ヘクタールで感染した杉を伐採した。11月には跡地にクヌギやカエデなど約8千本を植樹予定で、今後も感染した木の伐採を進めるという。

◆類似DNAで被害拡大

 千葉大学大学院園芸学研究科の近江慶光助教の話

 サンブスギの「スギ非赤枯性溝腐病」の発病については苗を植え、15~20年たった後に症状が確認される。病原菌は「チャアナタケモドキ」。DNAが類似した苗が大量に植えられているため、被害が拡大している。千葉県と茨城県で流行しているが原因は分かっていない。病原菌の宿主はスギの他に、サワラやコウヤマキ、ツツジやナシなどで確認されている。