共同作業「幸せな時間」 小湊鉄道・石川社長、トロッコ絵本で交流 巨匠・加古里子さん死去

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亡くなった加古さんへの思いを語る石川社長=市原市五井中央東の小湊鉄道本社

 「だるまちゃん」シリーズなどを手掛けた絵本作家で、2日に92歳でこの世を去った加古里子(かこ・さとし)さん。2016年には小湊鉄道(市原市、石川晋平社長)を描いた作品「出発進行! 里山トロッコ列車」(偕成社)を出版し、ほのぼのとした作風で多くの人を魅了した。制作を通じ生前交流があった石川社長は「一緒に絵本を作ることができて幸せだった」と振り返り、生涯現役で創作活動に励んだ巨匠の冥福を祈った。

 子どもの頃に同シリーズなどを読んで育った石川社長。里山トロッコ列車の導入に向けた構想を練る中、書店で偶然見つけたのが加古さんの絵本。案内パンフレットに生かせないかと15年1月、「思い切って“恋文”をしたためた」のが交流の始まりだった。

 里山をゆっくりと走り、沿線の見どころを案内する新たな観光列車は、加古さんの共感を呼んだ。イラストは当初、案内パンフレット用にのみ描かれる予定だったが、これが偕成社の目に留まり、絵本化が決定。石川社長にとっては予想もしない展開だったという。

 その後は神奈川県藤沢市に住む加古さんと文書でやりとり。里山トロッコ列車の設計図や沿線の自然、歴史、文化、地理が分かる資料を提供し、説明文の調整を重ねた。完成に向けた共同作業は「幸せな時間だった」といい、今では大切な思い出になっている。

 石川社長は16年春に加古さんと初対面し、これまでに10回程度顔を合わせた。「絵本のままの柔らかい人柄で、話をするだけで勇気をもらえた」。多くの名作を生み出し、尊敬する存在だったからこそ、突然の訃報には「もうお目にかかれないのが残念」と肩を落とす。

 8日には加古さんの自宅を訪れ、これまでの感謝の思いをささげた。開催が予定されるしのぶ会にも足を運び、改めてお礼の気持ちを伝える考えだ。

 長年にわたり子どもたちを楽しませた数々の絵本は「おのずと読み継がれる」と考える石川社長。残された者として「加古さんが伝えたかったことを微力ながら発信していく。お預かりする原画を見ていただく機会をつくるなどして役立ちたい」と決意を新たにした。