物議醸した市長室のガラス張りシャワー室 税金500万円が2年半で「ごみ」に 市川市の廃棄理由は #ニュースその後

当時市長室に設置されたシャワーユニット。写真は建設中(市川市提供)
当時市長室に設置されたシャワーユニット。写真は建設中(市川市提供)

 2020年10月に市川市役所の市長室に設置され、物議を醸したガラス張りのシャワー室。市内外からの膨大な批判、別施設への移設、当時の市長の落選…などの紆余(うよ)曲折の末、今年5月に廃棄されていたことが市への取材で分かった。購入から移設までおよそ500万円もの税金を投じたシャワー室が、わずか2年半で「ごみ」となってしまうのはもったいない気もするが…。市はシャワー室が新型コロナウイルス感染者の入院待機場所で使われていたことから、「ウイルスが残留しているのではとの不安を市民に抱かせる」などの理由で廃棄を判断したという。洗浄するなどして有効活用する術はなかったのだろうか。廃棄に至るまでの経緯や市民の反応を取材した。(デジタル編集部 町香菜美)

「無駄遣い」と批判噴出

 20年8月に一部利用を開始した市川市新庁舎。その市長室にガラス張りのシャワー室が設置されているのが分かったのは、21年2月の市議会で市議が追及したことが発端だった。これがメディアに報じられると、当時の村越祐民市長に対して「無駄遣いでは」との声が噴出した。

 シャワー室は市議への新庁舎お披露目から2カ月後の20年10月、市長室内のトイレの隅に追加工事を行い設置された。当時の市担当者の説明によれば、「災害時に市長だけでなく、職員も使うことが目的」。費用の約360万円は新庁舎建設に伴う余剰金を充てた。担当者は「追加工事なので、新築でやるより費用がかさんだ」と話した。

高級外車テスラ導入について説明する村越前市長=2019年7月、市川市のクリーンセンター
高級外車テスラ導入について説明する村越前市長=2019年7月、市川市のクリーンセンター

 ただ、新庁舎には既に災害時を想定した職員向けシャワー室3室を設置済み。問題のシャワー室は市長室内の二つの扉を通過しなければ入れない仕組みになっており、「市長専用では」との声が続出したほか、ガラス張りであることへの疑問も相次いだ。一方、村越前市長は「危機管理上、必要だった。必要に応じて新たに機能を追加することはあり得る。(市民に)理解してもらえると思う」と自信をのぞかせた。

 市はその後、災害時に市長室を女性職員の休憩室として開放し、その際はシャワー室を女性職員に利用してもらうと発表。市長自らも使うとして「必要な施設と考えている」と撤去は否定し、さらに波紋は広がった。

フィルム貼り、別施設で利用

 市議会で撤去を求める決議が2度にわたり可決されるなど批判はやむことがなく、市は21年9月、新型コロナウイルス感染者の入院待機場所として使用されることになった市内の「少年自然の家」への移設を発表。コロナ患者の搬送などの業務を終えた救急隊員らが使用するとして、浴室の一角に設置し、外から見えないようガラス部分にはフィルムが貼られた。約128万円の移設費はコロナ対応の予算を充てた。

「少年自然の家」移設後のシャワー設備写真。ガラス部分にはフィルムが貼られている(市川市提供)
「少年自然の家」移設後のシャワー設備写真。ガラス部分にはフィルムが貼られている(市川市提供)

 シャワー室には結局、市長室への設置から別施設への移設までの費用を合算すると、約500万円もの血税が投じられたことになる。

 この問題に加え、公用車に高級外車「テスラ」を導入するなどの行動で市政に混乱を招いたことが響き、村越前市長は22年3月の市長選で落選。得票率1割に届かず、供託金が没収されるという現職市長の落選としては異例の大惨敗だった。

 一方、同市長選で初当選した田中甲新市長は、市長室のスペースを半分に狭めたほか、前市長が使用した約200万円の執務机と椅子をネット競売で売却。「脱村越色」を打ち出してきた。

「『濃い使い方』をした」と市

 では、シャワー室はどうなったのだろうか。

 市への取材で、少年自然の家から今年5月に撤去・廃棄されていたことが分かった。新型コロナの大流行の中で有効活用が図られたものの、5月にコロナは感染法上の「5類」に移行。少年自然の家が入院待機場所の役目を終えて通常運営に戻る際に職員8人がかりで撤去。シャワー室は市のクリーンセンターに運搬され、「ごみ」として処分されたという。

 一時、猛批判を浴びた「負の遺産」とは言え、少なくない血税を投じた設備がわずか2年半でごみとなってしまうのは、もったいない気もする。有効活用できなかったのか。市に見解を尋ねた。

「少年自然の家」のシャワー設備があったとみられる場所=11月、市川市
「少年自然の家」のシャワー設備があったとみられる場所=11月、市川市

 市保健部の担当者は、シャワー室がコロナ患者に対応した救急隊員が使用してきたことを踏まえ、「ウイルスが残っているかもしれないと不安を抱く方もいると思うので、市民への再利用は難しい」と説明。洗浄して使えないのかとの問いには、「ガスや水道管が必要になるので適した移設場所もなく、移設するとしたらさらに費用がかかってしまう」との事情を明かす。

 短期で廃棄したことについては、「入院待機の場所で(ウイルスを拡散させない)特殊なシャワーとして使用するといった『濃い使い方』をしている。市民の理解は得られると考えている」と述べた。なお、利用した救急隊員の正確な人数は分からないという。

市民「使いたくも見たくもない」

 こうした経緯について市民はどう感じるのだろうか。

 廃棄されたことを知らなかったという看護師の女性(29)は「結果としてコロナ禍で役立ったのは良かった。ただ、たまたまコロナが流行したタイミングだったからで、コロナがなければごみを税金で作ったようなもの」としつつ、「ウイルス残留の心配や今後の移設費を考えると廃棄に至ったのは仕方ないのでは」と一定の理解を示した。

 会社員男性(40)は「シャワー室がどれだけ使われたのか分からないので判断できるような情報を出してほしい。前市長の私的な浪費に税金が使われた。市の予算レベルでいえば500万円はたいした額ではないかもしれないが、市民が働いて稼ぐ金額を考えると冗談ではない」と手厳しい。大学非常勤講師の男性(68)は「当時の設置理由は支離滅裂で、活用できたのであれば段階的に情報を公開してほしかった。市民として(問題のシャワー室は)使いたくもないし見たくもない。怒り心頭だが、最終的に廃棄に至ったのは仕方ないと思う」と話した。

※この記事は千葉日報とYahoo!ニュースによる共同連携企画です


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