本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「相関」 『「わたし」、「あなた」』

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 自分の事は自分が一番良くわかっているはず。本当だろうか?意外と自分の事は、過大評価してしまったり、過小評価しすぎたりで、わかっていないのでは?わたしってどんな人?どんな風に見えるの?他人に聞いた方が明確に答えてくれそうだ。他人の目を通すと、新しい自分を発見できる。「わたし」を四方八方から眺める面白い絵本がある。題名はそのまま『わたし』。

 おかっぱ頭の小さな女の子「わたし」。「わたし」は、男の子から見ると女の子。赤ちゃんから見るとお姉ちゃん。お兄ちゃんから見ると妹。お母さんから見ると娘のみちこ。お父さんから見ても娘のみちこ。おばあちゃんから見ると孫のみちこ。けんいちおじさんから見ると、姪のみっちゃん。さっちゃんから見ると友達。先生から見ると生徒……宇宙人から見ると地球人。レストランへ行くとお嬢さん。映画館へ行くと子ども。知らない人から見ると誰?歩行者天国では大勢の中のひとり。

 「わたし」は、向き合う人によって様々に変化する。「わたし」の前にはたくさんの「あなた」がいる。同じ詩人と絵描きのコンビによる『あなた』の絵本を一緒に読むと面白い。

 「かがみでみてもわたしはわたし。でもあなたからみるとわたしはあなた。……ひとりでいるときもわたしのまわりにはみえない『あなた』がいっぱいいる。……わたしはひとりではいきていけない。たくさんの『あなた』にであってわたしになる」

 絵本の中の「わたし」は、友達のさっちゃん(あなた)と向かい合っている。きのう「わたし」はさっちゃんとけんかした。うちに帰ってから泣いた。でも、今朝うっかり笑いかけてしまって仲直り。けいこさんが引越ししてきて、さっちゃんがけいこさんと内緒話をすると「わたし」は焼きもちを妬く。でもいつのまにか、けいこさんも友達になって「あなた」の仲間入り。

 「わたしはいつかあたらしいだれかにあう。あなたもいつかあたらしいだれかにあう。いろんな『あなた』にあうのがたのしみ。でもあなたとわたしはいつまでもともだち」。

 私も半世紀を生きてきて、その間に大勢の「あなた」に出会った。「あなた」と向き合う度、新しい何かを教えてもらった。嬉しい事、悲しい事、不思議な事。どんな出来事も、「あなた」がいなければ、体験できなかった事ばかり。「あなた」と向き合う事で、本当の自分が姿を現わす。いい子の私だけではない。意地悪な私、ひがみっぽい私……悪い子の私がぞろぞろ顔を出す。

 「わたし」と「あなた」をつなぐのは「絆」と言うえにしの糸--。......

 【メモ】「わたし」、「あなた」共に、長新太・福音館書店

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