外来種による水田の異変 写真のえほん8「たんぼのおばけタニシ」(大木淳一著)

  • LINEで送る

 この書は南米原産の外来種スクミリンゴガイ(おばけタニシ)が4世代家族の稲作農家に及ぼした異変を描いた内容のある写真絵本である。

 ぜひ、親子で読んでいただきたい。また、学校の先生や観察会の講師など環境問題の指導的な立場にある方にも一読をお勧めする。

 先日、この舞台となった九十九里町の田んぼを訪れた。昔から変わらない風景が広がっているかに見えるが、水路に見たこともない大きなタニシがごろごろ転がっている。また、毒々しいピンク色の卵のかたまりがコンクリートの壁やヨシなどの茎のあちこちに付着していた。スクミリンゴガイとその卵塊である。

 この巻き貝は貝の高さが8センチにもなり、かつて、食用目的で日本に移入し養殖された。しかし、味が日本人に合わなかったことや危険な寄生虫の発見などから販路が途絶えた。その上、野生化した貝が稲を食い荒らす有害動物になった。だが、それだけではなかった。本の後書きに「この世のものと思えない卵の色合いに驚き、息子がその卵と戯れている様子を見た時にこの巻貝が人間の心の奥深くにも侵入している」とあり、派手なピンク色を含む田んぼの風景が当たり前のものとして子供たちの記憶に残っていくのを案じている。著者が奥様の実家で農作業を手伝っている実感からにじみ出た思いなのであろう。確かに「世代を超えて親しんできた田んぼの風景が彼らに侵食されてよいのか?」とやり切れない気持ちになる。

 また、1年間の稲作の様子やこの巻貝の移入の経緯や生態、多くの外来種がいる現在の田んぼと昔のそれとの比較などの解説も簡潔でわかりやすく、水田の外来種問題の啓発書にもなっている。著者は東京生まれ。現在、千葉県立中央博物館上席研究員。(成田篤彦・千葉県立中央博物館友の会副会長)(そうえん社・1365円)