現代的にリノベーションして人気の花見川団地。花見川団地商店街は交流拠点として地域生活圏の活性化を推進し、にぎわいを創出する
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は、前身の団体が戦後の住宅不足を解消するために誕生し、国内の発展に大きく貢献してきた。高度経済成長時代には増加する住宅需要に応え、県内をはじめ全国で良質な団地を整備。建築から半世紀ほど経て、持続可能な団地にしようと、さまざまな事業を展開している。花見川団地(千葉市花見川区)では民間企業とタッグを組み、現代的にリノベーションして人気の物件に。地域活性化の拠点も整備した。戦後の復興を支え、現代の社会課題の解決に力を入れるUR都市機構の取り組みを紹介する。
県内最大規模の花見川団地
花見川団地の竣工は1968年。京成本線八千代台駅からバスで10分ほどの場所にある。賃貸と分譲を合わせて約7200世帯の約1万1千人が暮らすなど県内最大規模を誇る。団地内には約店舗ある商店街や市民センター、図書館分館、2つの保育所、3つの幼稚園を有し、小中学校が隣接する。近くには大きな公園や森があり、団地周辺だけで快適な生活ができる環境が整っている。
無印良品とタッグでリノベ
UR都市機構が全国で保有する団地は花見川団地と竣工が同じ時期のケースが多く、それぞれ年月を重ねて過渡期・転換期に直面している。団地の良さを見直し、優れた部分を上手に生かしながら、愛着をもって長く住み続けていけるよう、2012年から生活用品ブランド「無印良品」の住宅部門「MUJI HOUSE」とタッグを組み、現代の暮らしにマッチした団地へリノベーションしてきた。 「生かす、変える、自由にできる」をテーマに、柱や鴨居を残し、あめ色になった木材の味わいを残しつつ、白く統一された部屋のアクセントにする。一方、新しい素材の床や組み合わせられるキッチンなど日々の生活を楽しくさせるアイデアを取り入れる。コンパクトでミニマムなデザインと団地の相性は良く、全国で人気となった。
室内、屋外もイメージ一新
「MUJI HOUSE」とのリノベ住戸が千戸を超えた2021年、外観や屋外広場、商店街区画まで一緒に刷新する「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」がスタート。花見川団地が第一弾となり、2024年3月にお披露目となった。
MUJI×URのモデルルーム
屋外のリノベでは、商店会の店主などから要望を聞き、来訪者が「滞在できる場所」を目指した。机や椅子の設置、街路樹の植栽に加え、古いアーケードを撤去して開放的にした一方、日差し対策でオーニングを取り付けて雨天でも気軽に歩けるように整えた。団地のシンボルとなっている給水塔がはっきりと見えるようになったり、明るく塗り直された団地外観が青空に映えるなどイメージが一新した。また、共有トイレや案内看板も利用者が快適に使えるように改修した。
MUJI×URのモデルルーム
にぎわい創出へ7者協議会
ソフト面でのにぎわい創出へ、千葉市、UR都市機構、MUJI HOUSE、無印良品を展開する「良品計画」の4者で2022年に地域生活圏の活性化を目的として協定を締結。 さらに、花見川団地自治会、花見川住宅自治会、花見川団地商店街振興組合を加えた7者で「花見川団地を拠点とした地域生活圏の活性化推進協議会」が1月に発足。 4月に「団地内外/多世代が交流するコミュニティづくり」の交流拠点が、花見川団地商店街北街区にオープンした。
花見川団地の商店街区概要
コミュニティストア(108号室)では無印良品の出張販売を毎週木金土の週3日の運営に拡大。地域に根差したコミュニケーションからニーズをくみ取り、地域のくらしを支える商品を提供する。 コミュニティカフェ(107号室)1階では「コーヒーと古本をテーマとしたカフェ」を運営し、多世代間の交流や、会話を生み、集う憩いの場所とする。起業支援を目的とした「一坪開業スペース」を併設し、一日お試し出店の場所として利用できる。2階の「団地のくらし体感ルーム」では、無印良品の家具や収納用品を展示し、気軽に団地でのくらしを体感できるようにしている。
オープンしたコミュニティカフェ(107号室)
コミュニティサークル(106号室)では、地域住民の「やってみたい」を実現する場とする。サークル活動やワークショップなどを開催できる多目的スペースとなっており、団地内外や多世代の交流を促進し、地域コミュニティ活動の創出を後押しする。 今後、完成した交流拠点を活用しながら、さらなる地域生活圏の活性化を推進していく。
住宅不足解消目指し誕生
設備最先端、DK普及契機に
戦後の復興は、あらゆるモノが足りない中でスタートした。住宅事情は特に厳しく、1954(昭和29)年になっても全国で約280万戸の住宅が不足。UR都市機構の前身となる日本住宅公団は、大規模な宅地開発を行い、不燃住宅の供給を目的に55年に設立された。 高度経済成長期、人口流入が進む都市近郊を中心に大規模な団地整備に次々と着手。和室を食事場所と寝室に兼用する生活スタイルから、「食寝分離」という当時の新しい住宅様式「DKスタイル」普及の契機になり、ステンレス製の流し台、浴室と水洗トイレが住戸内にある環境は当時、最先端だった。 冬至の昼間でも4時間の日照があり、住戸のプライバシー確保へ建物の高さの1・8倍の棟感覚を空けることなど団地の基準はこのころにまとめられた。
県内最初の団地は常盤平
公団住宅(賃貸)では、60年に県内で初めて常盤平団地(松戸市)が誕生。約5千戸と当時としては大きな規模を誇った。68年には花見川団地(千葉市花見川区)が完成。千葉幸町団地(同市美浜区)ができた70年には公団住宅が全国で50万戸を超えた。 その後、芝山団地(船橋市)や千葉ニュータウン(白井、船橋、印西3市)が完成するなど現在は県内で110団地約9万戸を管理。全国では約1400団地の約70万戸を管理・経営する。
持続可能なまちづくり
今後も「多様な世代が暮らし続けられる住まい・まち(ミクストコミュニティ)」の実現を目指し、地域社会の再生、培われた生活価値・文化の承継、市場環境への適切な対応による「持続可能なまちづくり」を理念に、居住者の居住の安定を確保しつつ、各地域と団地の特性に応じた多様な活用を行っていく。