【千葉魂】漢・田村が輝いた仙台の夜 助っ人の声に押され決勝打 千葉ロッテ

優勝に向けて「求められた場面で自分の出来ることをする」と意気込む田村=ZOZOマリン
優勝に向けて「求められた場面で自分の出来ることをする」と意気込む田村=ZOZOマリン

 気迫の一打が、チームをさらなる上昇気流へといざなった。8月29日のイーグルス戦。杜の都・仙台はまだ猛暑の中にあった。肌にまとわりつくようなジメッとした蒸し暑さが残る夜。試合は両軍無得点のまま最終回を迎えていた。マリーンズは四球と相手失策を絡め無死二、三塁の絶好のチャンスを迎えながら、なかなか生かしきれない。2アウトまで進み、打席に田村龍弘捕手が向かった。

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 「少々ボール球でも気合で前に飛ばしてやろうと思っていました。とにかく食らいついていくイメージ。ワンバウンドのボールだけ振らないように意識して、あとはバットに当てて前に飛ばそうと思っていました」

 田村は打席での想(おも)いを口にした。後半戦に入りスタメン出場の機会が減り、この時も八回の守備からの途中出場で巡ってきたチャンスだった。「代打かなという思いもあった。だけど監督がボクをそのまま打席に立たせてくれた。期待に応えて、このチャンスで何としても結果を出したいという思いだった」と最後の最後で回ってきた大舞台に気合十分で向かった。

 しかし、熱さの中にも捕手として冷静な分析も忘れない。「一塁が空いているとはいえ打撃の状態が良かった次の藤岡さんではなくて、打撃成績的にも自分で勝負してくると思っていた」。揺るぎない確信でマウンドの宋家豪投手と相対した。カウント3ボール2ストライク。そこから外、内、外と150キロの豪速球を投じられるも食らいつきファウルを繰り返す。続くスライダーもファウル。声を出すことが禁止された静かなスタジアムで、ベンチからは仲間たちの後押しする声だけが響いた。

 ふと目を向けるとベンチ最前列でブランドン・レアード内野手とレオネス・マーティン外野手が身を乗り出して応援をしてくれていた。こみあげる想いがあった。

 「あの2人の姿を見てすごくうれしかった。試合に出ないことも多い中で、いつもあの2人が気に掛けてくれていて、励ましてくれた。『絶対にチャンスが来るから頑張れ』と。いつも気に掛けてくれていた」と田村。

 その先輩でもある両外国人選手2人が言っていたチャンスが今、目の前にあった。ベンチから聞こえる2人の声に励まされ、高めにすっぽ抜けたフォークボールを振り抜くと打球は田村の気持ちを乗せてレフト前に抜けていった。貴重な先制タイムリー。最終回2死から掴み取った漢(おとこ)・田村、気合の一打だった。一塁ベース上で小さくガッツポーズをした。

 「もちろんうれしかったですよ。でも僕はキャッチャー。その裏の回の守りがある。すぐに切り替えてどのようにリードして、この1点を守り切るかという事を考えました」

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 打者でもあるが根っからの捕手。その裏の守りで先頭こそ出塁を許すが後続を抑え見事、勝利を呼び込んだ。チームは4連勝。結果的に5連勝しマリーンズはその後も白星を重ね、ついに9月5日、今年初めて首位に立つ。その功労者の一人は間違いなく背番号「22」。気迫でボールに食らいつき決勝打を叩き出した仙台の夜がある。

 「これからもやることは一緒。求められた場面で自分の出来ることをすること。試合に出ないことも、途中から試合に出ることもあるけど、自分が出来ることをしっかりとやるだけ」

 前後期制、プレーオフを除くと1970年以来のリーグ優勝はもう目の前に迫っている。1試合も落とせない日々が続く。果てしない重圧が選手たちを襲う。その中で物怖じしない選手の存在は心強い限りだ。漢・田村が最高の感動を千葉に呼び込む。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)



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