2020夏季千葉県高等学校野球大会 あの瞬間を捉えた写真も多数

【千葉魂】「原点に戻れ」井口監督の思い 4番安田悩みながらも前へ

7月から4番を任された安田=ZOZOマリン
7月から4番を任された安田=ZOZOマリン

 「原点に戻れ」。9月4日、福岡で行われたホークス戦の試合前。グラウンドに現れた若き4番に井口資仁監督は声を掛けた。7月から4番を任せ、ここまでどんな時も起用をし続けてきた。多くは語らない。少し距離を置きながら、ただひたすら見守り続けてきたが安田尚憲内野手の悩める姿を見て近寄ることを決意した。

 「いろいろと悩んでいる感じだったからね」と指揮官はその時のことを振り返る。もちろん、井口監督もすべてがうまくいくとは想定していない。若き4番の前には山あり谷あり。21歳の若者がすんなりと4番に座り、チームに貢献し続けられるほどプロは甘くはない。ただ、一つだけしっかりと伝えたい想(おも)いがあった。それは芯を貫くこと。

 「キャンプからやり続けてきたことはやり続けるべきだ。1年間続けるべきだ。こうやると決めた事は最後まで貫け。その場しのぎの打撃はするな」。ホークス、そしてメジャーリーグ、そしてマリーンズでチームの主砲として歩み続けてきた井口監督が悩める若者にどうしても伝えたい想いだった。

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 うまくいかなくなると人はどうしても試行錯誤をする。いろいろな事を考えて試してみる。それは結構。ただし軸は貫いてほしいと思う。ここまでの成功体験や過程、自分自身の才能すら疑いたくなるほど追い込まれることはあるが、そんな必要はない。1月の自主トレ、そして春季キャンプ、オープン戦。一貫して取り組んできたこと、安田尚憲の打撃スタイルの土台となる部分、核を今、結果が出なかったからといって簡単に動かしてほしくはない。自分を信じ、その中で投手と向き合ってほしい。指揮官はその才能を評価したからこそスターティングオーダーのど真ん中、4番のところに名前を書く。そこには迷いなどない。だから安田もまた自身の才能と打撃を信じ、打席に向かってほしいというメッセージを伝えた。

 「4番はプレッシャーに感じるだろう。期待される打順。そういう時は4番目と思えばいい」。井口監督は若き4番を叱咤(しった)激励しながらも優しい言葉も忘れなかった。

 9月6日のホークス3連戦3戦目。2点リードの五回2死一塁で打席に立つと、どっしりと構えた。相手はここまで6勝を挙げている石川柊太投手。浮いたパワーカーブを狙った。「どの球種にも対応できるように考えながらゾーンを上げて待っていた」と振り切った打球は安田らしい美しい放物線を描きながら右翼スタンドに消えていった。15試合ぶり、66打席ぶりの一発。堂々と、そして悠然とダイヤモンドを一周する姿はまさに4番の姿だった。

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 ペナントレースもいよいよ佳境に突入した。その中で若者は4番に座り続ける。プレッシャーはさらに増す。乾坤一擲(けんこんいってき)の場面で震えと重圧を味わう事になる。しかし若者はその中で大きく成長していく。なによりもプレッシャーは誰だって感じるのだ。それはまさに生きている証だ。恐怖や苦悩の先にこそ今まで味わったことがないような喜びが待っている。安田にはそれを自らの手でこじ開ける使命がある。それはマリーンズ不動の4番になる男だからだ。

(千葉ロッテマリーンズ広報・梶原紀章)



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