【千葉魂】苦難乗り越え1軍デビュー 岩下、強打者へ真っ向勝負

  • LINEで送る

本拠地初登板で8回を三者凡退に抑え、捕手の田村(左)とタッチする岩下=7月29日、ZOZOマリン
本拠地初登板で8回を三者凡退に抑え、捕手の田村(左)とタッチする岩下=7月29日、ZOZOマリン

 もうブルペンには誰も残っていなかった。1点リードで迎えた延長十二回裏。マウンドに岩下大輝投手は向かった。7月24日のホークス戦(京セラ)。プロ4年目の岩下にとってのプロ初登板はとんでもない場面で訪れた。迎えるホークスの打線は4番デスパイネから始まる強力打線だった。

 「どういう心境だったのかと言われても全然、覚えていないくらい緊張しました。ただ四球だけはやめようと。ストライクゾーンに強いボールを投げていこうと決めていました。開き直るしかなかった」

 出番に備えてブルペンで肩をつくっている時、すでに投げ終わった投手陣が集まってきた。一人また一人とアイシング姿の先輩たちが現れ、投球練習をする姿を見守り、声を掛ける。信じられない光景だった。

 「ピッチャーの皆さんが次から次へとブルペンに来てくれて励ましてくれたんです。ベンチで応援をしてくれるのはあるけど、ブルペンまで皆さんが声を掛けにきてくれるなんて今までない。それは本当にうれしかったです。プロ初登板があんな場面で緊張もしていたし、どうしようかと思っていた部分もありましたが、あれで勇気をもらいました。自分は幸せだなあと感じました」

    □     ■     □

 1回を投げて被安打1、1失点(自責は0)。残念ながら1点のリードを守り切ることはできなかった。それでもデスパイネ、内川聖一、中村晃、松田宣浩と続いた名だたる打者に真っ向勝負をした。MAXは147キロ。1年目11月に右肘を手術し2年目のシーズンを棒に振った。昨年もオフに腰を手術した。なかなか投げられない日々。後に入団してきた年下の投手が1軍の舞台に先を越される悔しさも味わった。突然の登板だったが、今までの想いをボールにぶつけた。強打者たちに攻めの投球を見せた若武者の姿を1軍首脳陣も高く評価した。同点にこそ追いつかれたが後続は抑え、試合は引き分けとなった。堂々たる投げっぷりだった。

 「いろいろと悔しかった。そういう意味ではやっと1試合、1軍で投げることができた。家族にも心配をかけたので、元気に投げている姿を見せることができて良かった」

 宿舎に戻るとさっそく家族から連絡が入った。登板したのは23時を過ぎた延長十二回。しかし、それでも両親は「1軍に上がってから、ずっと試合を見ていたよ。いつ投げるか分からないからね」と投げている姿を見てくれていた。ここまで心配をかけた両親は息子がいつ投げるか分からないからとずっとナイター中継を見て待ってくれていた。その気持ちがうれしかった。そして今度はしっかりと0点に抑えることを誓った。

    □     ■     □

 7月29日のライオンズ戦。ついに岩下は本拠地のマウンドに上がった。今季2試合目のマウンドでさらに躍動した。MAXは152キロを計測。秋山翔吾、源田壮亮、浅村栄斗を打者3人で抑えてみせた。

 「まだまだこれからです。いろいろな方に心配をかけ、応援をしてもらったのですから、もっともっといい投球を見せて、活躍をして恩返しがしたいです」

 4試合に投げて防御率0・00(失点は1)。紆余(うよ)曲折を経てようやくたどり着いた1軍の舞台で若者は躍動した姿を見せつけている。我慢と忍耐を重ね地道にようやくたどり着いた1軍の舞台。誰より投げる幸せをかみしめながら投じるボールは簡単には打ち返されたりしない。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)