残念でした。ノルディック複合の個人ラージヒル。念願の五輪個人種目の金メダルが目の前にありました。なにせ、1992年アルベールビル、94年リレハンメルと日本が五輪の団体を連覇した時代でも、個人の優勝はありませんでした。今はコーチの河野孝典が94年に銀メダルを手にしたのが最高でした。 ノーマルヒルで2大会連続銀を獲得した渡部暁斗が優勝する鍵は前半ジャンプにありました。強豪のドイツ勢に後半距離のタイム差に換算して15秒差をつける飛躍をすれば勝てる。私はそう予測しました。暁斗はドイツ勢トップのフレンツェルには24秒差をつけたのです。いい展開でした。 ところが、小さな誤算が一つ、二つ…。一つ目は風です。公平な条件でしたが、全員が気持ちよく飛べる向かい風でした。だから暁斗がほかの選手とジャンプで大きな差をつけることができなかった。 二つ目は、今季それほどジャンプの調子が良くなかったドイツのルゼック、リースレ、フレンツェルの3人がそろって130メートルを超えたことです。距離でほとんど固まってスタートする感じになりました。3人いると、自転車競技のように先頭を入れ替わって力をためながら前の選手を追えます。 日本チームは「金」しか考えず、そのための戦略を立てたのでしょう。最初から飛ばして逃げ切る。私もそれ以外に可能性はないと思っていました。テレビのインタビューで暁斗は「ハイペースで入ってしまった」と言っていました。 だけどドイツの3人はうまかった。1人なら無理だったでしょうが、3人います。協力し合ってペースを上げ、10キロのコースの6キロあたりで暁斗を捉えました。あの時点で「勝てない」と思いました。最後のスプリント勝負はドイツ勢の独壇場。悔しいけれど完敗を認めるしかありません。分かっているけど、悔しいですね。 暁斗のスキーの滑りが劣っていたという見方もありますが、それよりも最初から飛ばした暁斗をドイツ勢が協力して逃さなかったということでしょう。1対3なら、かないません。 暁斗は5位、永井秀昭が12位、山元豪が16位、渡部善斗が20位でした。頭を切り替えて団体戦に集中することを願っています。
暁斗、目の前の「金」逃す 「成田収平 スキーの味方の見方」
2018年2月21日 06:12 | 無料公開
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