やっぱり見たい東京五輪 沿道に観客、感染憂慮

沿道で女子個人ロードレースを観戦する人たち=25日、東京都府中市

 新型コロナウイルス感染拡大で大半の競技会場が無観客の東京五輪。大会組織委員会は沿道などでの観戦自粛を呼び掛けるが、屋外競技では多くの人が一目でも見たいと周辺に集まっている。感染状況を憂慮しつつも「貴重な機会」「雰囲気だけでも味わいたい」といった声が聞かれた。

 自転車男子個人ロードレースが実施された24日、コースとなった京王線府中駅(東京都府中市)前のケヤキ並木に人だかりができていた。「沿道での観戦をご遠慮いただいております」と書かれたボードを持ったボランティアが立つが、口頭で注意する様子は見られなかった。

 たまたま通りかかった買い物客らも交じり、選手が通過すると拍手が起きるとともに、スマートフォンが一斉に向けられた。近所の男性会社員(55)は「密になることは気になったが、地元で見られる機会はめったにない。盛り上げておいて、『来るな』と言うのも無理な話」と複雑な表情を浮かべていた。

 トライアスロン男子が行われた26日のお台場海浜公園(港区)では、沿道で待ち構えた中央区の会社員石川隆一さん(54)が「来て良かったと言っていいか分からないが、臨場感はやはり最高」と興奮気味。2012年に現地で見たロンドン五輪などとも比べ「人は少ない。街の盛り上がりもいまひとつで寂しい」と話した。

 葛西臨海公園(江戸川区)は、スラローム男子が行われたカヌー・スラロームセンターに隣接し、観覧車から競技が一望できるが運転休止に。公園の一角から船体や波しぶきがわずかに確認できる程度だったが、千葉県市川市の主婦荻原久美子さん(67)は「誰かは分からなくても、こいでいる人の姿が見えて満足」と笑顔を見せた。

 サーフィンが行われた千葉県一宮町の釣ケ崎海岸周辺は、地元住民やサーファーが双眼鏡や踏み台を用意して観戦。25日に訪れた30代男性は「屋外競技を地元の人がそっと見守る程度なら感染リスクは低い」。

 新交通システムゆりかもめの有明テニスの森駅(東京都江東区)からは、自転車BMXの会場となる有明アーバンスポーツパークを見渡せる。29日はホームで100人近くが足を止め、改札外の通路でも視界を遮るシートの上から10人ほどがスマホをかざしていた。


  • LINEで送る