新宿の歴史を漫画で面白おかしく 風俗と文化を描く

「コミック新宿史」より

 東京・新宿の風俗文化史をSF仕立ての漫画で描き出した「コミック新宿史 新宿ジオラマ奇譚」がこのほど、新宿未来創造財団と新宿歴史博物館から発行された。

 著者は、同館の職員でミュージアムグッズなどのデザインを担当する井口たくみさん(56)。何か斬新で面白いグッズを作れないかと考えた時、自身が漫画家・小説家でもあることから、博物館がモチーフになった物語をコミックで表現するという構想が浮かんだ。

 主人公・未来創丸は、作中の博物館「千年ミュージアム」のオーナー学芸員でジオラマ作家。新宿歴史博物館がある新宿区四谷三栄町が、伊賀忍者の流れをくむ人たちが住む土地だったことをヒントに、忍者の子孫という設定にした。

 同館の人気展示品の一つに甲州街道の宿場だった内藤新宿のジオラマがある。「千年―」の展示室にも創丸が手掛けた精巧な新宿のジオラマが並び、このジオラマ空間に迷い込んだ創丸に導かれて、読者は過去の新宿を旅する。

 「カウンターカルチャーをテーマに、新宿の歴史を面白おかしく描きたかった」と井口さん。あか抜けた絵は、彼が愛するフランス語圏の漫画(バンド・デシネ)のタッチを思わせる。

 本書はアングラ文化が注目された1970年前後から時間をさかのぼり、30年代の昭和モダン、大正の前衛芸術集団マヴォ、江戸時代の狂歌師などを紹介。車好きの井口さんが随所に登場させた名車にも注目したい。

 価格は千円。新宿歴史博物館や区立の文化施設、紀伊国屋書店新宿本店などで販売している。郵送での購入の問い合わせは同館学芸課、電話03(3359)2131。


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