ヤンソンの貴重な原画紹介 ムーミン展、日本初公開も

 「ムーミン」シリーズの作者トーベ・ヤンソン(1914〜2001年)が生み出した貴重な原画などを紹介する「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」が、東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中だ。日本初公開の作品も約100点あり、作風から芸術性の高さが伝わってくる。

 ヤンソンの母国、フィンランドのタンペレ市にある「ムーミン美術館」の所蔵品から約500点を展示。注目はヤンソン作品と浮世絵を比較したコーナーだ。小説「ムーミンパパ海へいく」の挿絵と歌川広重の「名所江戸百景 大はしあたけの夕立」は、降りしきる雨を細長い線で描くという表現法が共通している。

 ムーミン美術館のタイナ・ムッリィハルエ館長は「浮世絵の影響がありました。ヤンソンは日本を何度も訪ね、文化や伝統、芸術に興味を持ちました。彼女が収集した本には浮世絵の本もあり、特に葛飾北斎に関心がありました」と説明する。

 ヤンソンの母が亡くなった後に刊行された小説「ムーミン谷の十一月」(1970年)は、悲しい物語に、主要キャラクター・スナフキンの哀愁漂う後ろ姿などの繊細な線画が添えられ、よき理解者であった母へのオマージュのようにも映る。ヤンソンの人生と作品が密接につながっていたことをうかがわせる。

 展示では、ヤンソンの生涯についても紹介。同国でスウェーデン語を話すマイノリティー出身で、女性のパートナーがいたことにもふれる。ムッリィハルエ館長は「私たちの国で女性パートナーがいることを公にした最初の女性の一人。勇敢な人でした」と語った。

 6月16日まで。一般1800円など。


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