「このまま死ぬかも」 暗闇の中、震えた夜 【房総豪雨】

浸水被害に遭った自宅を指さす市川容子さん=26日午後、佐倉市
浸水被害に遭った自宅を指さす市川容子さん=26日午後、佐倉市

 浸水と停電に見舞われたアパート1階の自宅から出られず、泥水にぬれた体が冷えていく。「このまま死んでしまうんじゃないか」。暗闇の中、96歳の母と救助を待った女性は、不安にさいなまれながら震え続けた。

 茂原市の美容師、久我芳子さん(58)が仕事先から帰宅したのは25日正午ごろ。大雨で前の道路は既に冠水、午後2時ごろには自宅にも水が入り始めた。万が一に備えて着替えなどは用意していたが、雨が弱まったこともあり「水は引くはずだ」と考えた。

 だが、その後も水は少しずつ増え、数十センチの高さに。床がぶよぶよになり、家具が傾いた。「家が漬かっています」。午後7時ごろに119番し、助けを求めた。

 母、キクさんとソファやベッドの上で救助を待った。おしりがぬれ、体温が下がる。消防隊員が来てくれるまで2、3時間かかっただろうか。高齢の母を気遣いながら、真っ暗な部屋で震えた。ボートで救助された2人が避難所に着いたのは午後11時ごろだった。

 「おとう、大変だ」。佐倉市で喫茶店を経営する市川平作さん(86)は26日午前3時すぎ、娘の容子さん(49)の大声で跳び起きた。

 容子さんは前日夕、降りやんだ雨に胸をなで下ろしながらも一抹の不安を感じた。家がある土地は低く、鹿島川に近い。

 目を覚ますと、玄関に水が流れ込んでいる。慌てて家族を起こして回った。

 平作さんは排水ポンプを動かした。9月の台風15号の時もポンプを使って事なきを得た。だが、今回は水量が多く、どうにもならない。そのうち停電が起き、ポンプは止まってしまった。

 容子さんが夫と布団などを必死で運び出す。2時間もたつと室内の水は腰の高さに達し、脇に寄せていた畳が流され、ソファやベッドも水浸しに。午前6時ごろ、消防団員や友人らが集まり、排水や家具を運ぶのを手伝ってくれた。

 「水っておっかない」。容子さんの友人宅に一家で身を寄せた平作さんはつぶやいた。


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