共助の力実感 本紙記者ボランティア 鋸南 【台風15号 被災地はいま】

災害廃棄物の仮置き場には瓦が山積みになっていた=26日午前11時40分ごろ、鋸南町
災害廃棄物の仮置き場には瓦が山積みになっていた=26日午前11時40分ごろ、鋸南町

 台風15号で甚大な被害を受けた千葉県内には、各地からボランティアたちが続々と駆け付けている。発生から間もなく3週間を迎えようとしているが、がれきの撤去や雨漏りで使えなくなった畳の搬出などの作業に追われる地域もある。東日本大震災で被災し、多くの支援を受けた経験がある記者が鋸南町に向かい、被災地の現状を肌で感じながらボランティア活動を行った。

 26日午前9時、鋸南町役場内にある災害ボランティアセンター。町外から集まったボランティア希望者とともに受け付けを済ませると、担当する作業を割り振る「マッチング」が始まった。倒木を撤去するのこぎりが使える人、がれき運搬用の軽トラックを運転できる人…。活動範囲は多岐にわたっている。

 まず3人のボランティアとともに、保田地区の70代女性方の屋根瓦と畳の撤去作業に向かった。

 女性は20年近く1人で暮らしているといい、自宅の屋根瓦はほとんど吹き飛び、雨漏りのために2階にあった畳や布団は湿って重い。布団を室内から引っ張り出していると、女性が「1人ではとてもできなかった。来てくれてありがとう」と声を掛けてくれた。

 東日本大震災の時は、通っていた高校でがれき撤去などの作業をしたことはあった。災害ボランティアに参加するのは初めてだったが、「私でも力になれたのかな」と思った一日だった。

◆支援の広がり期待 人手求める町民今も 元の暮らし、早く

 2千戸以上の住宅被害が確認され、停電と断水も長引いた鋸南町。24日に取材した町内の山間部にある市井原地区で土砂崩れや道路の崩落で倒れた電柱や倒木を目の当たりにし、町内では屋根がブルーシートで覆われたままの住宅も残っている。ボランティア活動を通じて、いまだに不安を抱えながら暮らす人がいることを知った。

 26日のボランティア活動で、保田地区の高齢女性の家のほか、竜島と元名地区にある2軒の住宅でも屋根瓦や倒木の撤去作業などを行った。ほとんどが70~80代の高齢者の住む家だった。

 今回の台風15号では、高齢化が進む県南部の自治体で大きな被害が出た。被災した鋸南町の70代女性からは「(高齢だと)瓦1枚運ぶのも大変」といった声が聞かれた。

 鋸南町社会福祉協議会によると、26日時点で町内でのボランティア参加者数は3124人。それでもまだ、町民からは1700件近くのボランティアの要望が寄せられている。

 一緒に活動した浦安市の自営業、十川英喜さん(56)は東日本大震災後にボランティア活動を始めた。「震災のニュースを見てすぐに(岩手県)陸前高田市に向かった。映像と実際に見るのとでは全く印象も違いがく然とした」と当時を振り返る。一方で「ボランティアのリピーターを増やしたい。きっかけはなんでもいい。足を運ぶことで分かることもあるはず」と話した。

 40代主婦のボランティア参加者は「鋸南町以外の自治体だと『在住者限定』など、制限があり行きたくても行けない」と指摘。「県南の地域はまだまだ支援を必要としている家が多くある。一軒でも多く手を差し伸べられたら」と語った。

 発生から3週間がたとうとしているが、十分な支援が行き届いていない地域もある。被災した県民が、一日でも早く元の暮らしが送れるようにボランティアの力が必要だと再確認した。

◆前向く姿に感じた強さ 体験後記

 高校2年の時、生まれ育った宮城県石巻市で東日本大震災を経験した。部活動中だった。体育館の床がうねり、天井から照明が落ちてきた。女子生徒の悲鳴と地面がうごめくごう音。「校庭に逃げろ」と教師が叫んだ。濁流が町をのみ込む。市の職員だった伯父も市民に「逃げろ」と叫んでいたという。その声は波にのみ込まれた。

 台風15号の被災地取材を通じて震災当時の記憶がよみがえった。この状況をどうにかしたい。鋸南町のほかにも八街市や館山市、市原市など。被災者から話を聞くたびに、人は自然災害にもろいという現実を突き付けられた。

 震災時の経験が生かせたら-。そんな一心でボランティア活動に臨んだ。感謝の言葉を掛けられると、うれしいという気持ちの半面、無力感も湧いた。がれきを運び出すことしかできない。それでも「すごく助かった」と声を掛けられると、来て良かったと思えた。

 県によると、27日時点での県内住宅被害は2万戸を超え、今後も増える見通しだ。復興までの道のりはまだ先が見えない。それでも前を向く被災者の姿があった。どんな災害にも打ち勝とうとする強さを感じた。(報道部・中野采香)


  • LINEで送る