夫に迎合「目背けた」 DV被害、影響も考慮 【小4虐待死地裁判決】

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栗原なぎさ被告の判決公判を傍聴しようと、千葉地裁前に並ぶ人たち=26日午前9時20分ごろ、千葉市中央区
栗原なぎさ被告の判決公判を傍聴しようと、千葉地裁前に並ぶ人たち=26日午前9時20分ごろ、千葉市中央区

 野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の虐待死事件発覚から約5カ月。本来、母親として守るべき立場にありながら、傷害ほう助罪に問われたなぎさ被告(32)に対し、千葉地裁は26日、執行猶予付き判決を言い渡した。「何度も救いを求められていたのに、虐待に苦しむ長女から目を背けた」。そう非難した一方、傷害致死罪などに問われた夫の勇一郎被告(41)から受けたドメスティックバイオレンス(DV)の影響など考慮すべき点を挙げ、社会で更生する道を示した。

 小池健治裁判長は判決理由で、虐待を止めようとした際に勇一郎被告から暴力を受けた経験などから「制止しても無駄だなどと考え、警察に通報するなどの対応を取らなかった」と指摘。心愛さんが柏児童相談所に一時保護された経過を把握していたからこそ、「警察や児相への通報や相談は容易に思い付くはず」と断じた。

 また、心愛さんの言動を監視して報告するなど「自らの判断で夫に迎合するような行動を選択していたようなところもある」と批判。虐待に手を貸していたことは「心愛さんの大きなストレスとなった」とも述べた。

 一方で「怒られるので断ろうと思うことができなかった」としたなぎさ被告の訴えに沿う形で、勇一郎被告からの度重なる支配的言動により「あらがうのが困難な状況に陥っていた」と認定。執行猶予付き判決が妥当とし、精神的脆弱(ぜいじゃく)を理由に公的機関の指導や助言が不可欠として保護観察を付けた。

 なぎさ被告の犯行に関連し、心愛さんに暴力をふるい続けていたとされる勇一郎被告について「苦しむ様子も気に掛けず、非人間的な虐待行為をためらいもなく加え続け、虐待そのものが目的化していた」と痛烈な言葉を放つ場面もあった。

 事件を巡り、心愛さんの一時保護以降の関係機関の対応が問題になる中、小池裁判長は、勇一郎被告が野田市教委職員を厳しく責め立て、心愛さんが父からの暴力を訴えたアンケートの写しを出させたことを例に「自己の意向を強く押し通そうとして他者に与える圧力は相当なものだった」と認めた。

 なぎさ被告の判決は求刑懲役2年に対し、懲役2年6月、保護観察付き執行猶予5年。千葉地検は「事実認定および量刑ともに、おおむね妥当な判決が得られたと考えている」とした。

◆頼れるのはあなたしか… 説諭に「はい」

 「頼れるのはあなたしかいなかった」。裁判長から説諭されると、なぎさ被告は顔を紅潮させ「はい」と繰り返した。5月16日の初公判と同様に表情はやつれていたが、落ち着いた様子で裁判長の言葉に耳を傾けた。

 なぎさ被告は白いシャツに黒いズボン姿で、髪の毛を後ろで結んでいた。判決が告げられた瞬間は前を向いたまま、身じろぎしなかった。

 「救いの手を差し伸べられる唯一の存在だったが、目を背けた」。裁判長が判決理由を述べる間、背中を丸め、ややうつむきがちに聞き入った。

 言い渡し後、裁判長が説諭を始めると、顔を紅潮させ、しきりに顔や髪を触る様子も。「頼れるのはあなたしかいなかった。心愛ちゃんのことを思いながら、反省の日々を送ってほしい」「心と愛で『みあ』と名付けたことや、沖縄で平穏に過ごしていたことを振り返れるのはあなたしかいない。それをしなければふびんでならない」と語り掛けると、一言一言に「はい」と小さな声でうなずいた。

◆傍聴券求め301人

 なぎさ被告の判決公判が開かれた千葉地裁前には、午前11時の開廷前から傍聴希望者の長い列ができた。一般傍聴席70席に対し、希望者は301人で倍率は4・3倍だった。

 判決公判を傍聴した船橋市の主婦(35)は「(なぎさ被告が)頼りたい時に親に頼れない環境や勇一郎被告からの暴力を考えると、6割くらい同情しながら判決を聞いてしまった。有罪判決だけど周りの手を借りながら、少しずつ良くなってほしい」と願った。

 自身の母親が父親から虐待を受けていたという茂原市のアルバイトの男性(36)は「母親もそうだったが、女性は男性に従わざるを得なかったのかなと感じた」としながらも、判決について「妥当だと思った。心愛さんはずっと苦しかったはず。社会で更生して罪を償ってほしい」と話した。