被災経験、子どもたちへ 液状化工事の経緯検証を 浦安市 【3・11大震災ちば8年~語り継ぐ】(1)

被災時に避難した旧入船北小学校の体育館を訪れた古賀さん。取材当日は地域の防災訓練が行われていた=浦安市
被災時に避難した旧入船北小学校の体育館を訪れた古賀さん。取材当日は地域の防災訓練が行われていた=浦安市

 〈私たちが小学6年生の時、東日本大震災が起きました。街の至る所で液状化が起き、ガスや水道も止まり、卒業を前にして学校は休みになりました〉

 東京ディズニーランドで1月14日に行われた浦安市の成人式。誰もが派手やかに着飾ったハレの場で、千葉大学2年の古賀百華さん(20)は新成人代表のスピーチをこう切り出した。

 震災当日、友達と浦安市のコンビニにいる時に地震が起き、液状化する地面を目の当たりにした。「すごく揺れて怖かった」。小学校に避難し、先生や友達と非常食を食べ、体育館にマットを敷いて寝た。卒業式の10日ほど前のことだった。

 〈震災の影響を受け、卒業式は短縮されてしまいました。しかし、私の入船北小学校では卒業証書授与だけでなく、練習してきた卒業の言葉や合唱までやりきることができました〉

 同小は児童減少に伴い2015年に閉校。校舎は現在、まちづくり活動プラザとして避難訓練など地域の活動に利用されている。古賀さんが震災の話題を盛り込んだのは、卒業式の大切な思い出の残る母校が「浦安にあったことを思い出してほしかった」からだ。

 〈これからの時代を担っていくのは私たちの世代です。時にはつらいことがあるかもしれません。しかし、被災という経験を乗り越えてきた私たちなら、どんな逆境でも乗り越えていけるはずです〉

 古賀さんは力強い言葉でスピーチを締めくくった。「あんなにぐちゃぐちゃだった街がこんなにきれいになったし、震災に遭って命の危険にさらされても今を生きられている。この先、何があっても大丈夫」。そんな思いを込めたという。

 今、夢だった小学校教員を目指して教育学部で勉強に励んでいる。教員になった暁には被災経験はもちろん、その時に先生たちがしてくれた優しい対応も、身をもって子どもたちに語り継いでいくつもりだ。

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 一方、行政にも将来に引き継がなければならない出来事がある。震災を受けて計画した市街地液状化対策工事と、その大半が中止に至った経緯についてだ。

 市内では3地区471戸で工事が計画されたが、完了の見通しが立ったのは、わずか7%の1地区33戸のみ。他地区は住民合意の撤回などを受け、市が国の補助金交付期限も踏まえ昨年相次いで中止を判断した。

 内田悦嗣市長は住民合意の難しさを痛感しつつも、こうした事業に行政がどう取り組むべきかの「経験値を蓄積できた成果はあった」と指摘する。市には、工事を巡る経緯をしっかり検証し、行政運営の貴重な「一事例」として有効活用する姿勢が求められる。

(市川支局・中島悠平)

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 千葉県内など全国各地に未曽有の被害をもたらした東日本大震災から間もなく8年を迎える。震災の記憶の風化が懸念されるが、被災者、東京電力福島第1原発訴訟の原告らは、災後のいまを強く生きている。そんな市井の人々の未来へ語り継ぐ思いを伝える。


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