「ばかにされたくない」 あまりに軽い殺害動機 茂原女性強殺、少年に無期判決 【法廷から 記者が見た人生模様】

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殺害された椎野さんの自宅=昨年3月、茂原市東茂原
殺害された椎野さんの自宅=昨年3月、茂原市東茂原

 「ばかにされたくない思いから誘いに応じてしまった」

 強盗殺人などの罪に問われた少年(19)が千葉地裁の裁判員裁判で語った事件の動機は、人の命の重さに対してあまりに軽い内容だった。

 茂原市東茂原の住宅で昨年2月、住人の椎野芳子さん=当時(85)=が現金を奪われ殺害された事件。動機を淡々と語る少年は、仲間への見栄(みえ)を優先し、何の罪もない高齢者の命を奪ったことへの悔恨の情は見られなかった。

 少年には無期懲役の判決が言い渡された。

◆「生活費足りていた」

 茂原市内のアパートで同居していた共謀少年2人から強盗のメンバーに組み込められ、脅しや暴行の実行役として参加した。「(生活費は)全然足りていた」と話すように土木作業の仕事で定期的に収入を得ており、困窮の末の犯行ではなかった。

 事件では主要な役割を担っていたが、事前に決めた金の取り分は仲間より少なかった。「金ではなくメンツが大事だった」と言い切った。

 仲間の一人とは出会って日も浅く、親しくなかったという。「会って2、3日の相手にあおられるのはしゃく」「(この少年に)ばかにされるのが問題」と語気を強めた。語られたのは、身勝手な理由ばかりだった。

 金の在りかを聞き出そうと椎野さんの首を絞め、この少年に「そんなんじゃ死なねえ」と挑発されると台所からナイフを持って来させて首を突き刺し、「とどめを刺せ」と言われると続けざまに2回刺して殺害した。

◆判決1週間後に控訴

 「ほとんど歩けずに抵抗もできない母をなぜ殺したのか」。母親を失った長男の悲痛な思いを裁判長らが代読した。少年は最終陳述で「受刑生活で更生し、残りの人生をかけて償いたい」と謝罪したが、被害者への言葉は少なかった。

 弁護士によると「悩んだ末の決断」で、少年は判決を不服とし、言い渡しから約1週間後に東京高裁へ控訴している。

 千葉地裁では共謀した別の2少年の公判が今後開かれるほか、地裁判決を受けた少年の控訴審も東京高裁でやがて開かれる。

 「なぜ母を殺した」-。「更正する」という言葉の前に、遺族の苦しみ、悲しみに向き合い、悲痛な問い掛けに真摯(しんし)に向き合って、真実を語ってほしい。

(社会部・渡邊翔太)