革製品、食肉で特産に 県南部で急増するキョン 捕獲数増と経済効果狙え 【ちば最前線 勝浦支局長・廣田和広】

 勝浦市で2001年に閉園した大型観光施設「行川アイランド」の跡地活用計画が動き出した。太平洋を臨む宿泊型リゾート施設に生まれ変わる予定で、地元では従業員の雇用や宿泊客による経済効果に期待が高まっている。

 一方で、行川アイランドから逃げ出したとされる特定外来生物「キョン」の県内での生息数急増には歯止めがかからない。

 中国南部や台湾に生息するシカ科の草食獣で、体高は最大約50センチ、体重は同約10キロ。県南部を主なすみかにしており、生態系のバランスが崩れて病害虫の発生など日常生活に悪影響が出始めている。いすみ市内では家庭菜園や農作物が荒らされている。

 県自然保護課によると、県内の推計生息数は01年度末に約千頭だったが、増え続けて11年度末に約1万8100頭、17年度末に約3万5900頭に達した。県と自治体は駆除に取り組み、01年度の捕獲数17頭から11年度に1203頭になり、17年度は3475頭を記録。しかし、メスは早ければ生後半年前後で妊娠し、同1年~1年2カ月程度で初出産するため、捕獲数を上回る勢いで増加している。

 いすみ市農林課などによると、捕獲ペースが上がらないのには、狩猟者の高齢化のほか、アニメ映画の「バンビ」のような愛らしい姿が狩猟者の気持ちをそぐ-といった背景がある。また、農業被害額がまだ少ないのも要因。17年度、同市内のキョンによる農業被害額は57万円で、同1494万円でワーストのイノシシ対策に施策のウエートが置かれる現状にある。

 イノシシなどに比べ、捕獲後の利用法が確立していないこともネックとされる。だが、キョン肉は台湾で高級食材として扱われ、角や骨は漢方薬として珍重されているという。中国でも食用で、革は殺菌作用があるといい、楽器などを拭くセーム革、山梨県の郷土伝統工芸品「甲州印伝」の材料として日本へ輸入されている。

 こうした価値に、いすみ市内で狩猟体験ツアーなどを提供する会社社長の石川雄揮さん(41)が、同市地域おこし協力隊員時代に目を付けた。16年にキョンの革を約15分で剥ぐ方法を考案し、国内で初めて純国産キョン革を製作。同市が貴重な革を使用した乳児靴作製講座を企画すると、予約ですぐに満員に。関心の高さが浮き彫りとなった。

 御宿町公民館で今夏にあったイベントでは、元料理人の石川さんが講師を務めてキョン料理を振る舞った。脂が少ない赤身の肉は高タンパク低カロリー。低温で調理して、リンゴとヨーグルト、梅ドレッシングを混ぜた特製ソースを掛けて提供した。牛肉のような食感で、参加者は「軟らかく、さっぱりしている。おいしい」と高評価。石川さんも「店で出せる味」と太鼓判を押す。

 宿泊型リゾート施設が完成すれば、新たな観光需要が生まれる。その元となった施設から逃げ、地域の農地などを荒らす“迷惑者”も、革製品やグルメといった特産品に変えれば注目を浴び、経済効果はもちろん、駆除も進むはずだ。この「課題解決型プラン」を実現させるには、活用に向けた取り組みへの支援が欠かせない。


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