パラ選手「絵」で応援 躍動作品SNSで話題 頸椎損傷のイラストレーター 市原の前田さん 【2020東京オリ・パラ】

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自宅で1日約3時間、制作活動する前田さん。「障害者スポーツの素晴らしさを広めたい」と意気込む=市原市
自宅で1日約3時間、制作活動する前田さん。「障害者スポーツの素晴らしさを広めたい」と意気込む=市原市

 頸椎(けいつい)損傷の大けがを負い、首から下を動かすことのできないイラストレーター、前田健司さん(45)=市原市=の描く障害者アスリートのイラストが「躍動感がある」などとSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で話題になっている。口でパソコンを操作し、数多くの作品を生みだした。2020年東京パラリンピックへ向け「自分の絵で、障害者スポーツの素晴らしさを多くの人に伝えたい」と力を込める。

 大けがを負ったのは36歳の時。南房総市の和田浦で友人らとサーフィン中に突然波にのまれ、海底の岩に首を強打。「俺、このまま死ぬんだな」。妻・千佳子さん(43)や生まれたばかりの娘の顔が走馬灯のように駆け巡った。

 近くのサーファーに救助され、一命を取り留めたものの、頸椎を損傷。首から下が動かせなくなった。「最初は治ると思っていた」が、リハビリを続けても改善しない日々が続き、いつしか希望が絶望へ変わった。「もう治らないのか。なぜ自分が」。見舞いに来た家族にも「死にたい」と漏らした。

 千葉県内の病院を転々とした後、紹介で大分県の重度障害者センターに転院。職能訓練で口でパソコンを操作する方法を学び、講師から文書作成ソフト「ワード」で絵を描くことを勧められた。試しに図形を重ね合わせて赤いチューリップを制作。「意外に描ける」。ふさぎこんでいた心が軽くなった。

 花や鳥をテーマに練習を重ねた後、写真やイラストをパソコンに取り込み、上からなぞって描く独自の制作方法を確立。制作を始めて約7カ月後、感謝の気持ちを込め、千佳子さんと娘を描いた絵をプレゼントした。「妻から『すごい』と言ってもらった。人に喜んでもらえることがうれしかった」と励みになった。

 14年のソチ・パラリンピックを視聴し、並外れた選手の身体能力に心を揺さぶられた。「生活するだけでも大変なはずなのに、目の見えない選手がスキーをしていた。選手の活躍を多くの人に伝えてみたい」

 従来の手法を生かし、パラ選手を色鮮やかに描き始め、自身のウェブサイトやSNSに投稿。反響は想像以上に大きく、絵を見たパラアスリートから「自分の絵も描いてほしい」と依頼されることも。現在、大手レコード会社「エイベックス」に所属し、同社所属選手の公式イラストを手掛けるなど、趣味が仕事になりつつある。

 リハビリの合間を縫い、1日約3時間だけ、さまざまな選手を描き続けた。特にパラ五輪で計3個の金メダルを獲得した車いすテニスの国枝慎吾選手には、思い入れがある。「自分が初めて描いたパラアスリート。リオでは金メダルを逃したけど、東京ではまた金を取ってほしい」とエールを送る。

 東京パラリンピックまで2年を切り、「パラスポーツを知ってもらえるチャンス」と、日に日に期待は膨らむ。前田さんは「競技や選手を多くの人に知ってもらえれば、同じ障害者としてうれしい。何らかの形でパラリンピックに関わりたい」と意欲を示す。

 問い合わせは前田さんのフェイスブック(https://www.facebook.com/maedakenjiart)。