石切豪邸に集う若者 「二拠点生活」を提案 富津・金谷のシェアハウス 【古(いにしえ)を使ふ 千葉県内で受け継がれる建物・技術】(5)

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石切の古民家を活用したシェアハウス「炊きた亭」を紹介する滝田さん=富津市
石切の古民家を活用したシェアハウス「炊きた亭」を紹介する滝田さん=富津市

 「房州石」の産地として知られ、明治から大正初期の最盛期には年間約56万本を採取、当時の住民8割ほどが石の事業に関わっていたという富津市金谷地区。JR浜金谷駅から徒歩10分の山林沿いに、金色の家紋が刻まれた屋敷が現れる。石切の大本締めが住んでいた築約80年の古民家は、圧巻の造りだ。

 一時空き家になったが昨年4月、若者らが共同生活する今どきのシェアハウス「炊きた亭」として生まれ変わった。再生させたのは、金谷で移住者支援業などに携わる滝田一馬さん(28)ら。

 滝田さんは都会で暮らす人が地方にも拠点を持つ「二拠点生活」を広めようと、2014年に東京都内のIT企業を退職。学生時代から何度も訪れた金谷へ移住した。「東京から近く、海も山もある。東京に住む人が、自分に合った頻度で田舎と関わるライフスタイルを金谷から発信したい」

◆家賃は月3万円

 「ライターとして独立を」「ケーキ店を開きたい」。炊きた亭には夢追い人が集まる。

 シェアハウスは、6畳ほどの和室に改装した7室がそれぞれの専有スペース。ダイニングやリビング、風呂場やトイレは共有する。家賃は水道・光熱費込みで月3万円。破格の安さも若者を引き寄せる理由だ。

 住人は、隣町の「2号店」と合わせ男女計10人。フリーランスとして仕事する20~30代の若者ら。滝田さんは「古民家を安く借りられたので、安価な設定で十分運営できる」と話す。

 ウェブサイト制作などを行う住人の桜庭航さん(25)は「快適に過ごせて、ウェブ関係のノウハウを持つ人とも交流でき、炊きた亭での経験は貴重」という。滝田さんは「田舎での生活は不安も大きいが、炊きた亭には同じような夢を持つ人々が集まる。帰ると誰かがいる安心感も魅力の一つ」と胸を張る。

◆週末は田舎で

 より多くの人に田舎暮らしを体験してもらおうと、昨年からは地元企業と連携し、「お試し移住」の支援プログラムも展開する。町内のレストランや介護施設での週3日の勤務と炊きた亭での生活を条件に、「月10万円」を支給し、家賃も補助する。独立などの夢を持つ人を全力で後押しするとともに、田舎暮らしの魅力を伝える。

 およそ10人がプログラムを活用し、「フリーライターとして独立するためプログラムを使い、半年で仕事を軌道に乗せた人もいる」と成功例を紹介する。

 「二拠点生活」を提案、発信する活動は、一歩ずつ進む。内房の海が一望できる鋸山の麓(ふもと)の古民家を、二拠点生活向け貸別荘に改装している最中で、来春オープンを目指す。

 「東京で働く人が、週末は金谷で釣りや農業を楽しみ、月曜日に仕事へ戻る。そんな生活ができる施設になれば」。“石の町”として栄えた金谷に残された古民家が、夢追い人たちの生活基盤をしっかり支える。

◇炊きた亭 滝田さんが展開するお試し移住プロジェクトの参加者は、炊きた亭の家賃補助が出るほか、さまざまな企業や個人が利用できるコワーキングスペースも無料で利用できる。問い合わせはホームページ(https://kanayaiju.com/)。