「思い出を消したかった」-。千葉市内で1月、交際相手の女性との別れ話に落胆して女性の実家に放火し、現住建造物等放火の罪に問われた同市花見川区の無職、大石絵梨紗被告(24)に千葉地裁(市川太志裁判長)は15日、懲役5年の有罪判決を言い渡した。子どものころから自らの性に違和感があり、性同一性障害と診断された大石被告。そんな自分を受け入れ、婚約もしたのに告げられた別れ。「頭が真っ白になった」。多くの人命や財産を危険にさらした凶行へと駆り立てた背景は? 防ぐ手立てはなかったのか? 性同一性障害者の理解促進に努める団体の代表にも話を聞いた。
(社会部 町香菜美)
◆小学生のころから
“違和感”は、小学生のころから既にあった。
「小さいころから男っぽかった。スカートを嫌がり男の子の友達が多かった」と、公判で大石被告の母親は振り返る。
短髪で、法廷ではTシャツと紺色のジャージー姿。質問にははっきりとした口調で答えた大石被告。「小学生のころから男性といるほうが楽しかった。恋愛対象も女性の方が多かった」。高校のバスケットボール部の知り合いに「同じ人」がいたといい、そこで「性同一性障害」という言葉を知る。
専門学校を経て、インストラクターとして働いたジムで出会った女性と2014年4月ごろから交際。その後、同居するように。翌年、同居は女性の両親の知るところとなる。女性は両親から「別れた方が良い」と諭されたが、隠れて同居を続けていたという。
交際1年半後の15年の秋ごろ、大石被告は病院で性同一性障害と診断された。「自分でも分かっていて驚きはなかった」が、「友人、両親への対応に悩んだ。カミングアウトは怖かった。周りの見る目が不安だった」。
ただ女性からは「自信を持って男性と思っている」と伝えられ、「受け止めてくれていることがうれしかった」。昨年のクリスマスにプロポーズ。女性の承諾をもらい、ペアリングも購入した。
◆「会わせない」
幸せの絶頂もつかの間、約2週間後に事態は急変する。