2022年10月20日 15:31 | 無料公開

森の墓苑で生息が確認されたカヤコオロギ=14日、長南町(森の墓苑提供)

森の墓苑を訪れた八千草さん=2019年5月
公益財団法人「日本生態系協会」(東京都豊島区)は20日、千葉県長南町市野々地区で運営する自然再生墓「森の墓苑(ぼえん)」で、県のレッドリストで最重要保護生物に指定されている「カヤコオロギ」の生息を確認したと発表した。同協会の理事を務め、2019年10月24日に88歳で亡くなった女優、八千草薫さんが野草の種をまいた場所で見つかっており、同協会の担当者は「命日を前に八千草さんが(カヤコオロギを)呼んでくれたのかな。いい報告ができます」と話している。
同協会によると、9月25日に開いた虫の鳴き声を観賞する「虫聴き会」で、生物調査の担当者が体長約1センチの雌のカヤコオロギを見つけた。最初の発見を受け調査を続け、今月14日にも2匹の雌の生息を確認し、写真の撮影に成功した。個体は捕獲していないという。
カヤコオロギは墓苑内の「八千(やち)の草はら」と呼ばれる場所で発見された。19年4月、生前の八千草さんが現地を訪れて、野草の種をまいたことにちなみ名付けられた。
カヤコオロギはマツムシ科で、明るい草地に生息。ススキやチガヤといったイネ科の植物を好んで食べる。本州と四国、九州の千葉県を含む13都府県で絶滅危惧種になっている。
森の墓苑では、地元にもともとある樹木を墓標にして、自然の再生を目指している。面積約1ヘクタールで、16年にオープンした。土砂採掘場だった土地を同協会が取得し、植樹するなどして、50年後に自然の森にすることを目指している。
同協会の佐山義則さんは「多様な草が生えて、さまざまな種類の昆虫が生息できる環境をつくってきた。開苑から6年半が経過し、カヤコオロギが確認できて活動の成果がでている」と説明した。