磯に棲む小さなサザエ コシタカサザエ 【海の紳士録】

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 サザエは北海道南部から九州までの日本列島沿岸に広く分布する巻貝で、千葉県の重要な水産生物のひとつでもある。壺焼きなどにして賞味される美味な貝であることは言うまでもない。

 海の博物館のある勝浦市の磯で生き物を観察すると、サザエに似た小さい貝がたくさん見つかる。これらの多くはサザエの子供ではなく、コシタカサザエという別の種類である。コシタカサザエは大きくなっても殻の高さが三センチほどにしかならず、サザエよりずっと小型である。分布域はサザエより狭く、太平洋側では房総半島以南、日本海側では山口県以南で見られる。

 同じくらいの大きさのコシタカサザエとサザエの殻の形をくらべると、コシタカサザエの方がやや細身で、殻の口も小さい。もっとわかりやすいのは蓋の違いで、サザエでは表面に左巻きの渦を巻いた畝(うね)があり小さいトゲでおおわれるのに対し、コシタカサザエの蓋には畝が無く表面はなめらかである。

 この二種は発生のしかたも異なる。サザエはオスとメスが放出した精子と卵が水中で受精し、発生した幼生は数日間海を漂ったあとで海底に降りて幼貝になる。これに対しコシタカサザエのメスはゼリー質で包まれた卵を海底に付着させて産卵し、オスが放出した精子との受精はこの状態で起こる。幼生は卵殻の中でしばらく発生を進め、海底を匍匐(ほふく)する状態でふ化する。近縁でよく似た形の貝であるが、その生活史は大きく異なるのが面白い。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 立川浩之)