川の恵みと驚異伝承 利根水運の象徴「高瀬船」も 野田・県立関宿城博物館 【ふさの国探宝】

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展示室の中で圧倒的な存在感を放つ、利根水運の象徴「高瀬船」の模型=野田市の「県立関宿城博物館」
展示室の中で圧倒的な存在感を放つ、利根水運の象徴「高瀬船」の模型=野田市の「県立関宿城博物館」
精巧なジオラマで、当時の河岸の活況ぶりをうかがうことができる
精巧なジオラマで、当時の河岸の活況ぶりをうかがうことができる
サイクリング客が集う併設の土産店では、名物のせんべいや野田の特産品が人気
サイクリング客が集う併設の土産店では、名物のせんべいや野田の特産品が人気

 野田市の中心市街地から車を走らせること約30分。のどかな田園風景の中に、白い外壁が目を引く天守閣が見えてきた。江戸時代、関宿藩の藩庁が置かれた関宿城を、古い文献に基づき再現した城郭型博物館。1995年の開館以来、川の流域に暮らした人々の文化や歴史、産業を主題に、関宿地区のシンボルとして地域に深く親しまれてきた。

 利根川、江戸川の分流点に位置する関宿。その地の利を得て、近世から近代にかけては水運の街として繁栄した。東北地方から運ばれてきた米や野田の特産品・しょうゆ、流山のみりんといった食料や、材木などの物資を積んだ舟が水路を行き交い、江戸に暮らす人々の生活を支えた。

 博物館は、かつて関宿城が築城されていた場所から500メートルほど離れたスーパー堤防上に建つ。4階建てで、敷地面積は約1万1千平方メートル。文献や模型に加え、子ども向けの映像資料も豊富にそろう。

 テーマは「河川とそれにかかわる産業」。東京湾へ注いでいた利根川を太平洋へ流す江戸幕府の一大事業「利根川の東遷」をはじめとする近世の河川改修、河岸の発展、利根運河開削工事について学べるほか、徳川家康の異父弟・松平康元を初代藩主とする関宿藩の解説も充実している。

 中でも、目玉は圧倒的な存在感を放つ利根水運の象徴「高瀬船」の模型。3分の1スケールだが、幅約8メートル、高さ約5メートルで迫力は満点だ。同じフロアには、船問屋や船宿、商店が立ち並び、活況する河岸を詳細に再現したジオラマも用意。しょうゆ蔵や河岸問屋をイメージした展示室の内装も相まって、威勢の良い船頭やあきんどの声が聞こえてくるかのようだ。

 一方、川とともに生きた人々の生活は、危険と隣り合わせだったことも忘れてはならない。展示室へ入ってすぐにある実物大の「水塚」は、盛り土で高さを出した洪水時用の避難施設。同館の岡田光広上席研究員(61)は「昭和30年代ごろまで各家庭で機能していた」と指摘する。濁流に流され、助けを求める人々を描いた版画や、水没した野田の街を捉えた写真も並ぶ。

 水の恵みと、自然の驚異を教えてくれる関宿城博物館。見学後は四方に名峰を望む最上階の展望室で、穏やかな利根川、江戸川の水面(みなも)を眺めてみてほしい。先人たちが築いた水資源を守る使命感と、水害に備える大切さを再認識できるだろう。

◇文・写真  柏支局花村愛弓

◇一口メモ せんべいや「猿島茶」人気

 併設の土産店は、サイクリング客の休憩地としても人気。売れ筋は名物の博物館名入りせんべいで、野田特産のしょうゆや老舗の漬物、関宿藩が製造を奨励した「猿島茶」も販売する。谷鹿栄一館長(59)は「圏央道の開通で、成田や香取方面からの来館者も増えた。今後も地域の発展に寄与していきたい」と話す。

◇交通 東武野田線川間駅北口から朝日バス(境町行き)約32分、関宿城博物館下車。開館時間は午前9時~午後4時30分、毎週月曜休館(祝祭日の場合は翌日)。問い合わせ(電話)04(7196)1400。