石の裏のフジツボ フルイヒラフジツボ 【海の紳士録】

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 磯で石をひっくり返すと多くの生きものを見つけることができる。魚やエビがすっと逃げだし、貝やヒトデがのっそりと動きだす。また、石の裏をよく見てみると、生きているのかどうかよく分からないような生物が多く付着している。フルイヒラフジツボはそんな石の裏に付着する住人の一種である。

 フジツボの一種で、他のフジツボと比べて扁平な殻を持っている。石の裏や岩のすき間といった狭い場所でくらしやすい姿なのだと思うが、日陰なら岩の表面にいることもある。日本では主に4種類のヒラフジツボ類が見られるが、同じ場所に混在していることもあり、外見での区別は難しいことも多い。

 フジツボ類は、蔓脚(まんきゃく)という、羽毛のようにふさふさした脚を動かして水中を漂う餌を集めて食べている。ヒラフジツボ類のように狭い所にくらしていては、蔓脚を思うように動かせるのか、他人事ながら心配になってしまう。

 人が動かしたのか波の力か、磯で大きな石が裏返っていることがあり、生きものたちの死骸がたくさん付着している。表面に出された石の裏の住人達は、乾燥や高温に耐えられなかったり、他の動物に食べられてしまったりして、生き残ることができない。窮屈そうに見えても、ヒラフジツボにとっては、石の裏が住みやすい場所なのである。石を裏返して生きものを観察したら、元の向きに戻すよう心がけたい。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 村田明久)