
2020年に開催される東京五輪でのサーフィン競技の会場が、千葉県内に決定しました。九十九里浜の南端に近い一宮町の釣ケ崎(つりがさき)海岸です。ここはサーファーの間では「志田下ポイント」として有名で、サーフィンに適する波が立つ場所としてサーフィンの国際大会も開かれています。
サーフィン会場の誘致にあたっては、まずサーフィンが五輪新種目に加わることが第一でしたが、千葉県の他、福島、茨城、東京、神奈川、静岡、愛知、宮崎の計8都県が会場誘致に名乗りをあげていました。
千葉県内では、一宮町・いすみ市が連携を組み、他にも安房の4市町、勝浦・御宿もそれぞれ連携して、熱心に誘致活動をしました。このような経緯の中、昨年12月8日に、会場が決定したのです。
会場が釣ケ崎海岸に決定した大きな要因の一つが、波が良質で年間を通して安定していることです。このため多くのサーファーが訪れ技を磨いていることから「波乗り道場」とも呼ばれ、多くの有名選手も練習してきました。連携を組んだいすみ市の太東海岸もすぐ近くにありますが、こちらは湘南・鴨川と並んで「サーフィン発祥の地」ともいわれています。
釣ケ崎海岸には、大きな鳥居があります。サーフィンの海岸に鳥居とは異質な感じがしますが、毎年9月13日に行われる、この地域最大の祭りである上総十二社祭り(裸祭り)の祭典場にもなっているのです。
この祭りは、一宮町の街中にある、上総国一宮である玉前(たまさき)神社の祭神玉依姫命(たまよりひめのみこと)と一族の神々が1年に1度再会するという、浜降り神事、漂着神信仰の祭りです。807年に創始されたと伝えられ、1200年以上の伝統があります。
現在では一宮町といすみ市岬町にある五つの神社の9社(9基)の神輿が、地元の人に担がれて集まります。祭りのハイライトが、各神輿が鳥居の下をくぐって駆け抜ける「鳥居くぐり」です。
実は、この海岸近くの祭典場は、40年くらい前に移されたものです。それまでは海岸からやや離れた国道128号沿いの山の麓、現在はリゾートマンションが立っている場所付近が本来の祭典場でした。車が増え、交通事情によって現在の場所に移されたので、鳥居の建造年月日は1981(昭和56)年9月13日となっています。
1200年間の伝統がある祭典場が、年間を通してサーフィンでにぎわう海岸であるという、新旧の取り合わせがおもしろいこの場所は、それぞれの「聖地」といえます。
そして、2020年には世界の人々が集う祭典の会場になるわけです。ここで開かれる五輪サーフィンがどのような大会になるか、とても楽しみです。地元では、課題を抱えながらも3年後に向けて準備にあたっています。
(県立長生高校・関信夫)