ガラス繊維を持つ生物 ホッスガイ 【海の紳士録】

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 名前にカイと付いているが、ホッスガイは貝類ではなくカイメン(海綿)の仲間の動物である。貝類ではないのに名前にカイが付く動物には、ヒトデの仲間のモミジガイやサンゴの仲間のセンスガイなど、いろいろな例がある。昔は硬い骨格を持った海の生きものが、貝類とあまり区別せずに認識されていたことの名残であろう。

 ホッスガイは、コップ形の体の下に長い毛の束が付いた、不思議な形をしている。この形が、毛を束ねて作った仏具の払子(ほっす)に似ていることが名前の由来である。砂泥質の深海底に住み、毛の束の先で海底に突き刺さった状態で、直立して生活している。生時には、毛の束の海底に埋もれていない部分にスナギンチャクという刺胞動物の一種が共生している。千葉県からはこれまで採集記録は無いようだが、勝浦沖からはキンメダイの底釣りの際にホッスガイの仲間が稀に採集されることがある。

 ホッスガイは、カイメン類の中の六放カイメンというグループの一員である。六放カイメンは別名ガラスカイメンとも呼ばれ、体を形作る骨格がガラスと同じケイ酸化合物でできているのが大きな特徴である。六放カイメンの骨格のガラス繊維は、光通信に用いられるグラスファイバーより純度が高いものだといわれる。

 人間がガラス繊維を作るのには原料を高温で溶かす必要があるが、ホッスガイの仲間は低温の深海で海水中からケイ酸を取り込み純度の高いガラス繊維を生み出す。その仕組みが興味深い。(千葉県立中央博物館分館海の博物館 立川浩之)