疲弊する現場に光明 看護師養成200人体制が始動 【地域医療を守る 看護師問題への挑戦 安房地域】<上>

館山市に再び看護学校が開校。1期生49人が入学し、看護師となるべく3年間の看護教育を受ける=館山市の安房医療福祉専門学校
館山市に再び看護学校が開校。1期生49人が入学し、看護師となるべく3年間の看護教育を受ける=館山市の安房医療福祉専門学校

 看護師不足が深刻だった安房地域に一筋の光明が差し始めた。この4月、館山市に3年制看護学校「安房医療福祉専門学校」(川井文子学校長)が開校。2012年に創設された4年制大学「亀田医療大学」(クローズ幸子学長)は、2年後に1期生の卒業を控えている。医療崩壊を食い止めようとする地域の取り組みを看護師問題を中心に検証した。(館山・鴨川支局 柴田智弘)

 07年、館山市の安房医師会病院(現安房地域医療センター)は、看護師不足で病床の3分の1が稼働しなくなり、翌年4月に亀田グループの社会福祉法人太陽会に経営移譲した。10年1月には地域医療の中核を担う亀田総合病院が看護師不足から病床を制限し、軽症患者の救急利用の自粛を求める異例の事態となった。看護師不足は地域社会を揺るがした。

◆相次ぐ閉校、新設

 09年に館山病院付属の館山准看護学校(館山市、1学年定員20人)、10年には准看護師の正看教育を担う安房医師会の安房看護専門学校(同)が、それぞれ学生減のため閉校。安房地域には亀田グループの亀田医療技術専門学校(鴨川市、1学年定員約80人)だけとなった。

 相次ぐ看護学校の閉校に安房医師会は当時、今後5年間で看護師が200人不足すると試算し、危機感を募らせた。千葉県に看護学校設立を求める動きもあったが反応は鈍かった。公立校設立の望みが薄い中、亀田グループが動き出す。

 09年12月、学校法人鉄蕉館の亀田省吾理事長は「大学志向が高まっている。看護師志望の高校生が地域外に出てしまう」と、1学年定員80人の看護大学設立を表明。鴨川市の支援を受け、12年4月に亀田医療大学を開学させた。

 3カ月後、今度は太陽会の亀田信介理事長が「(既存の専門学校と新設大学を合わせた定員)160人では足りない。県北では看護師の奪い合いが始まっている」として、さらに1学年定員40人の安房医療福祉専門学校の設立を発表した。

◆隔世の感

 「学校ができても入学者がいなくては閉校した安房看護学校の二の舞になる」。安房医師会の宮川準元会長は安房健康福祉センターと協力し、各高校の進路ガイダンスで看護師の魅力をアピールした。また、安房地域3市で奨学金の整備に尽力し、看護師への就職の機運を盛り上げる。

 今年4月、安房医療福祉専門学校には1期生が入学。亀田グループによる看護師養成200人体制が完成した。亀田理事長は「これで安房だけはなんとかなる」と息をつく。受験倍率は約4倍。学生減で看護学校が相次いで閉校した4年前とは隔世の感だ。

 宮川元会長は49人の新入生に安房医療の希望を見いだす。「現場は疲弊しているが、もう少し頑張れば新人が入る望みができた」


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