

新型コロナウイルスの影響により、千葉県内の入浴施設が苦境に立たされている。成田空港近くの大型温泉では、外国人を中心に客足が激減。地域住民が集う銭湯でも客が普段の半分近くにまで減った時期もあったが、感染防止対策に細心の注意を払いながら「いいお湯に入ってもらいたい」と営業を続けている。
昨年7月にオープンした富里市の大型温泉施設「東京湯楽城」。新型コロナの影響で3月から営業を休止し、7月に再開した。間隔を空けての更衣室利用や消毒の徹底といった万全の感染防止策を取っているが、営業再開後の8、9月の客数は昨年同期比で7割ほど減っているという。
施設内にあるカプセルホテルでの宿泊客受け入れは取りやめており、宿泊希望者には同じ敷地内のホテルを紹介している。成田空港から近く海外からの観光客利用も見込んで開業したが、感染拡大に伴う入国制限で「海外のお客さんが来ない状況」だという。
週末には地元の人でにぎわうようになってきたが、担当者は「湯楽城だけでなく、空港周辺の施設はどこも入国制限の全面解除を願っている」と説明した。
地域住民の憩いの場になっている銭湯。県公衆浴場業生活衛生同業組合によると、新型コロナによる廃業は確認されていないが、コロナの影響で平均2~3割程度客数が減少し、自主的に営業時間を短縮する施設もあるという。
千葉市花見川区の「梅の湯」は、創業100年以上の老舗銭湯。普段なら1日当たり130人前後いた利用者数は、5、6月ごろに半数近くまで落ち込んだ。現在は80~100人ほどまでに持ち直したが、高齢者らが割安で入浴できる取り組みは感染拡大防止のため休止したままだ。
それでも、毎日のように通ってくれる常連客らのために、番台には飛まつ対策の透明シートを設置。脱衣場の消毒にも気を遣い、換気にも注意している。約40年前から足を運ぶ女性(78)は「ここは『風呂友』がいっぱい。憩いの場です」。
3代目の長沼二三六(ふみろく)さん(75)は「銭湯は地域の中で人情が交差する場所。単に風呂に入って帰るだけじゃない」と力を込める。新型コロナの収束が見通せない状況の中でも、長沼さんは「いいお湯に入ってもらい、にこにこして気持ち良く帰ってもらうのが一番」と話した。