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「資本論」マルクスの娘エノリアはなぜダメ男に魅かれ尽くしたのか?

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「資本論」で知られる19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクスの末娘エリノア・マルクス。彼女の生涯を『ミス・マルクス』(公開中)として映画化

 「資本論」で知られる19世紀を代表する哲学者、経済学者カール・マルクスの末娘エリノア・マルクスの激動の半生を描いた映画『ミス・マルクス』(原題:MISS MARX)がシアター・イメージフォーラム、新宿シネマカリテほか全国で公開中だ。

【動画】映画『ミス・マルクス』本編映像

 カール・マルクスには6人の子ども(二男四女)がいて、父の業績を支え、後世に伝えるべく尽力したマルクス家伝説の三姉妹の末娘がエリノアだ。幼い頃から勝ち気で聡明、シェイクスピアをはじめとする文学にも親しみ、フローベールの「ボヴァリー夫人」やイプセンの戯曲「海の夫人」や「民衆の敵」などを最初に英訳し、「人形の家」のノラ役をはじめ、その戯曲を俳優として演じるなど、多才な才能の持ち主でもあった。父カールの「資本論」の英語版の刊行も手掛けている。

 また、早くから政治に関心を示した彼女は、16歳で父の秘書となり、社会主義者の会合にも参加。劣悪な条件のもとで働く労働者たちの環境改善に励むとともに、男女平等を唱え、「女性はもはや男性の奴隷ではない」と訴えた。その功績はつねに父親の偉業の陰に隠れがちだったが、社会主義とフェミニズムを結びつけた草分けのひとりであったことは間違いない。

 そんな彼女は1898年、43歳の若さでこの世を去る。実は、1983年に最愛の父カールが亡くなった後、劇作家、社会主義者のエドワード・エイヴリングと出会ったことで、彼女の運命は大きく変わる。知的で社交に長けたエイヴリングに魅せられたエリノアは、彼が既婚者と知った上で、「結婚は時代遅れの制度」と公言し、結婚をしないままエイヴリングとの同棲生活を始める。

 だが、エイヴリングは大の浪費家で、名うてのプレイボーイでもあった。エリノアの財産を使い尽くし、マルクス家の親族や友人を頼って借金をする一方、女遊びが絶えず、晩年までエリノアを深く苦しめることになる。

 フェミニストであったエリノアが、なぜエイヴリングのようなダメ男に生涯尽くしたのか? エイヴリングへの愛と政治的信念の狭間で徐々に引き裂かれていった彼女の生涯は、矛盾と悲劇に満ちていた。映画『ミス・マルクス』は、そんな彼女の功績をあらためて見つめ直すとともに、「#MeToo」ムーブメントに揺れる現代の女性たちに、大きな問いかけをもたらすだろう。

■エイヴリングへの愛と政治的信念の狭間で、エノリアの心は蝕まれていく

 WEB上で公開された本編映像では、エリノア(演:ロモーラ・ガライ)がドイツ社会主義労働党に任命された党を代表するアメリカ旅行へ、恋人のエイヴリング(演:パトリック・ケネディ)を誘ったところ、エイヴリングが熱いキスで応えるシーンで幕をあける。アメリカのパンクロックバンド「ダウンタウン・ボーイズ」の楽曲とともにエリノアたちのアメリカ旅行の様子が映し出され、当時の労働者たちの劣悪な労働環境の様子を伝えるアーカイブ写真や映像が随所に挟み込まれる。

 エリノアは、「労働者の疑問はアメリカでも同じでした。その本質は変わりません。なぜ実際の生産者が得られる富が最も少なく、生産者ではない者が最も富を得るのか」と市民に演説をするが、一方、エドワードは、豪勢なレストランにエリノアを誘い、ホテルの部屋を花をいっぱいにして彼女を驚かせるのだった…。