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「作業工程すっ飛ばしすぎ!」な仏像に反響、元サラリーマン仏師がSNSで発信する理由

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ツッコミ殺到? 三浦耀山さん(@biwazo)による仏像制作過程(写真:本人提供)

 「これをこうしてこう彫ってます!」と、仏像を彫る工程を表したツイートが、7.9万のいいねと集めた。ツイートに貼られていたのは、3枚の写真。仏像の出来はもちろん素晴らしいが、ざっくり彫った木材からいきなり精工な仏様が現れる様子に、「行程すっ飛ばしすぎ!」とのツッコミも。とはいえ、普段なかなか目にする機会のない仏像制作の模様に、興味津々なユーザーが多かった。同ツイートをしたのは、仏師の三浦耀山さん(@biwazo)。三浦さんに、SNS発信を行う理由、コロナ禍でインバウンド需要が落ち込む現在の打開策を聞いた。

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■仏像制作過程に7.9万いいね、「飛躍しすぎ」な写真にツッコミ殺到

 京都を拠点に、仏師(仏像を作ったり、古い仏像を修復する職人)として活躍する三浦耀山さん。もともと、みうらじゅん・いとうせいこうの『見仏記』(みうら、いとうが各地の仏像を鑑賞して著した紀行文シリーズ)のファンで、趣味で仏像巡りをしていたという。「仏像が大好きになって、だんだん彫ってみたくなった」と、それまで勤めていた一般企業を辞めて、1999年に大仏師・渡邊勢山氏に師事。以後13年に渡って、師のもとで仏像彫刻・修理に携わり、2012年に独立。サラリーマンから仏師へと、華麗な転身を遂げている。

――「これをこうしてこう彫ってます!」のツイートが7.9万「いいね」と大きな反響になっていますね。

 「3年ほど前、京都の寺の法要に来たお客さんが、私の作った仏像(ドローン仏)をツイートしてバズったことはありました。でも、自分自身のツイートでバズったのは、これが初めてです。『写真の2枚目から3枚目が飛躍しすぎだろ』というツッコミがありましたが、僕としてもその辺が面白いのかなと(笑)。自分の彫った仏像をいろんな人に観てもらい、『こうして彫ってるんだ』と知ってもらうのは、単純にうれしいですね」

――これはどういった仏像なのでしょうか?

 「観音菩薩像、いわゆる観音様です。技法は寄木造で、材木はヒノキです」

――なぜSNSに投稿されたのですか?

 「やはり、自分の彫った仏様を見てもらい、知ってもらいたいという思いがあって、2~3年前から彫り上がった仏像をTwitterにアップしていたんです。人に見てもらえばうれしいし、見た方から『欲しい』と注文が入ることもあり、プロモーションとしても機能しています。バズった時の拡散力は、他のSNSと比べてもTwitterはすごいと思います。Instagramもやっていますが、自分はテキストを読むのも好きなので、写真メインのインスタよりもTwitterの方が好きです。今回の『飛躍しすぎだろ』っていうツッコミも、Twitterならではですよね(笑)」

――三浦さんはある記事の中で、「仏像制作で重視するのは、独自性よりも人々が仏様に親しみを持ってくれること」というお話をされていました。そういったお考えがSNS発信にもつながっているのでしょうか?

 「そもそも仏像は、”礼拝の対象”じゃないですか。人々は仏像を通して仏に祈る、いわば仏につなげるものなので、彫った作者が主張してはいけないかなと思うんです。仏に対してすっと手を合わせられるようなものを作る…それが仏師の使命です。このことは、基本的に心掛けています。また、1000年以上昔から続いている伝統的な技法を大事にしたくて、それも発信したいと思っています」

――祈りの対象である仏様だけに、関係者から「SNSに上げるのは不謹慎」とお叱りを受けることはありませんか?

 「SNSは発信のツールとして定着しているので、少し前ならわかりませんが、今はとくにお叱りなどはないですね。今、伝統工芸の市場規模は右肩下がりとなり、パイが小さくなっているので、常に『どうやって一般の方々に知ってもらうか』を模索しています。なので、工芸の世界でSNS発信している人は結構いるんです。特に京都は職人が多い街なので、いろんな分野の職人さんが発信しています。見せ方の上手い職人さんは、何万ものフォロワーさんを抱えていますよ」

――市場規模は右肩下がりとのことですが、伝統工芸の世界について、課題として考えられていることは?

 「市場規模が小さくなり、仕事の量が減って職人は生きていけない、だから子どもに継がせられない、とも言われています。ですが、実は作品や技術を知ってもらえていないだけだと思うんです。今ならSNSを通じて、存在を世界にアピールできますし、潜在的ニーズはまだまだ呼び起こせると思います。コロナ禍でインバウンドは落ち込んでいますが、世界中で潜在的な需要はあります。SNSは個人で発信できて、世界中の人に見てもらえるのが強みなので、今後も利用していきたいと思います」

――三浦さんが所属する土御門仏所のHPを見ると、伝統的な仏像彫刻のほかに、『ドローン仏』『ガチャ仏さま』『3D仏像データ』など、仏像を現代の技術と融合させた試みが見られます。これらも、そういった新たな試みの一環ですか?

 「そうですね。ドローンや3Dプリンターなど、新しい技術と昔からの伝統技術を融合させていろいろな見せ方をしていますが、その根本にあるのは『仏教の世界を具体的、立体的に表現する』という思いです。たとえば、平安時代に日本で流行った『阿弥陀來迎』という、阿弥陀如来が雲に乗って亡くなった人を迎えに来てくれる仏教画があります。今から1000年前に、阿弥陀如来が宙に浮いている様子を仏師が描いたものですが、それを現代の技術を用いて立体的に表現したのが『ドローン仏』です。発想としては、決して突飛なことではないんじゃないかと思いますね」

――なるほど! 浮遊している仏様の絵が、現代になったらドローンに…というのは、つながりを感じますね。では最後に、これらツイートなどを見て、初めて仏像彫刻の世界に触れた人に伝えたいことは?

 「今、古い仏像を見るのが好きな人って多いのですが、この機会に、今も平安時代や鎌倉時代の流れを汲んで仏像を作っている仏師もいるんだと、多くの人たちに知ってもらえればと思います」