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「気持ち悪い」から「SNS大喜利」に転化…大阪万博ロゴマークの生みの親も感動「この現象こそアート」

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2025年日本国際博覧会のロゴマークに選ばれた最優秀作品

 2025年の日本国際博覧会(以下、大阪・関西万博)のロゴマークが、SNSで大きな広がりを見せている。アマチュアクリエイターたちの手により、ゲームやアニメ、さらにはキャラクターソング、ぬいぐるみまでが作られ、SNSはお祭り状態に。当初こそ「気持ち悪い」などネガティブな声もあった同ロゴマークだが、だんだんと「なんか可愛く見えてきた」と親近感を抱く声も多く見られるようになった。同作品の“生みの親”はこうした周囲の動きにどんな想いを抱いているのか。アートディレクター・シマダタモツ氏に聞いた。

【画像】他にはどんな候補が?『大阪・関西万博 ロゴマーク』最終5作品

■賛否両論からのSNS大喜利、「“公式”ではないところの遊び心がすごくいい」

 2025年の大阪・関西万博の公式ロゴマークが決定したのは、8月25日のこと。「いのちの輝き」をテーマに、「セル(細胞)」を意識した赤い球体が連なる作品で、1970年大阪万博のDNAを受け継いでいるという。Twitterでは、発表とともに関連ワードがトレンド入り。「面白い作品だな」、「遊びがある」といったポジティブな声の一方、「怖い」、「気持ち悪い」、「ゲームのボスにこういう奴いた。トラウマだわ」などのネガティブな声も上がり、賛否両論真っ二つの様相を呈していた。

 このロゴマークを作ったのは、シマダデザイン(大阪市浪速区)のデザイナーらで構成する「TEAM INARI」。その代表がシマダタモツ氏だ。1965年生まれで大阪出身。主な作品に朝日放送株式会社(ABC)のロゴマークなどがあり、88th NY ADCポスターデザイン部門・ブックデザイン部門でGOLD CUBEなど数多くの受賞歴もある。シマダ氏は、これらSNSやネットの反響について、「賛否が両極端だったのが、すごく面白いと思いました」と振り返る。

 「『気持ち悪い』という言葉も、興味を持ってもらわないと出てこない言葉じゃないですか。それがまず、うれしいですね。また、小さいお子さんからの反応はいいようで、小学校でもその話題で1日盛り上がったと聞きました。次世代の子どもたちに人気ということは、とてもうれしいことです」(シマダ氏/以下同)

 発表後わずか数時間で、ロゴを元にしたイラストやアニメ、ゲーム、キャラソンなどのアレンジ作品がSNSに殺到していたことも、もちろん把握している。

 「ちょうどロゴ決定記者会見の後、スタッフと食事会をしていたときに見ていたんです。わずかな時間にいろんな派生作品が出来上がっていく、そんなデジタル世代ならではのスピード感に驚きましたし、“公式”ではないところの遊び心もすごくいい。皆で食事をしながら、『こんなのも上がってる!』など盛り上がりましたね(笑)」

 もともと、「いのち輝く未来社会のデザイン」という万博のテーマから生まれたこのロゴマーク。

 「最初はサークルのモチーフから始まり、制作過程で『命を表現するものは何か』と考え、“セル=細胞”のアイディアが生まれたんです。さらにその“セル”で躍動感や存在感を表現できたら…と、だんだんと変化していきました」

 目玉に見えるものは、実は細胞の“核”。これを1970年大阪万博のロゴマークの花びらにあわせて5個配置し、核の色も同じく引用した。細胞の赤は、日の丸や生命力をイメージしている。

 「キーワードとして、“個と個のつながりで競争が生まれていく”というものがあったので、それもイメージしました。目玉に見えるという声もありますが、それもまた“いのち”が表現できた結果ではないかと考えています」

 こうした様々な意図を込めて生まれたこのロゴマークだが、SNSのアマチュアクリエイターたちから自由にアレンジされていることも、前向きに受け止めている。

 「『勝手にロゴを使って!』なんていうことは思っていませんし(笑)、可能ならば皆さんの作品とコラボしてみたいくらい。僕はアナログ世代で、インターネットやSNSをほとんど見ない人間なのですが、今回の件でデジタルのスピード感を知り、そこについていけるようにならなければいけないと思いました」

■「SNSが発達した現代ならでは」、一連の現象自体が現代アートに

 「一つのモチーフが生まれ、それを見て皆が何かを感じとり、さらに別のものに変化させて発表する。これもまた、違う形のアートなのかな」とシマダ氏。

 現代アートには“コンセプチュアル・アート”というジャンルが存在するが、見ようによっては今回のこの“現象”そのものが現代アートのようにも感じられる。コンセプチュアル・アートは、1910年代のフランスのマルセル・デュシャンの活動に端を発するもので、これまでのアートの枠を超え、「この作品はアートなのか」「この作品は何なのか」と鑑賞者に“思考”を要求するアート形式のこと。考えることで、鑑賞者のなかで作品が完成していくスタイルのものだ。実際、今回の現象のあとにはロゴマークの受け取られ方も変化。いつの間にか“いのちの輝き君”という愛称までが付けられ、「最初は気持ち悪いと思ったけど、だんだん可愛く見えてきた」、「いろんな作品を見ているうちに親近感がわいてきた」との声が多くなっていった。

 「SNSが発達した現代ならではの現象ですよね。今後、デジタル面でいろんな形のアートが作られる、そんなことにも想いを馳せました」

 現在、SNSでは様々なジャンルのアマチュアクリエイターが作品を投稿。作品は多岐にわたり、イラストや漫画、動画、音楽、造形物からアクセサリーなど、枚挙にいとまがない。SNS以前の時代であれば、発表の場すらなかった作品たちはスピーディーに拡散され、それをきっかけにプロになる人も多い。

 「出てくる場所がSNSであろうがネットであろうが、才能は才能です。せっかくそういう時代なのだから、ぜひ若いうちからやってみた方がいいと思いますね。ただし、気軽な分、人を傷つけないなどルールは守って、自由に表現できたらいいのではないかと思います」

 SNS時代ならでは、一つの現代アートのような現象を生んだこのロゴマークだが、大坂・関西万博の場で活躍するまでには、まだ5年の時間がある。

 「ロゴマークは僕の子どものような存在だし、まだ赤ちゃん。万博が開催されるまでに皆に可愛がられ、毎年成長していってもらえたらうれしいです。そしてこのロゴのように、予定調和ではない、ワクワクドキドキするような万博になればいいなと思います」

 このロゴが今後、どんな変化を見せていくか。そして、新たなアートを生んでいくか。これからの5年が楽しみだ。

(文:衣輪晋一)