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『少年ジャンプ』全世界対象のマンガアプリ配信の背景 海賊版サイトの脅威を「可能性に」

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『IMART 国際マンガ・アニメ祭 REIWA TOSHIMA』に出席した(左から)伊東敦氏、籾山悠太氏 (C)ORICON NewS inc.

 マンガ・アニメの現場に携わる専門家が業界の未来を描くカンファレンス『IMART 国際マンガ・アニメ祭 REIWA TOSHIMA』が15日、東京・としまセンタースクエアにて開幕した。その特別講演として、集英社編集総務部・部長代理の伊東敦氏と週刊少年ジャンプ編集部・少年ジャンプ+副編集長の籾山悠太氏が登壇。ジャンプの世界戦略と海賊版への対策について語り尽くした。

【写真】『MANGA Plus by SHUEISHA』のユーザー数上位国一覧

 少年ジャンプは今年、中国と韓国を除く全世界対象のマンガ配信アプリ『MANGA Plus by SHUEISHA』をリリース。同アプリは、英語・スペイン語に翻訳した作品の最新話がジャンプの発売日にあわせて無料で読むことができるサービスで、アメリカ、メキシコ、スペイン、インドネシア、タイの順に、今年10月には125万人のユーザー数まで増やしている。

 同社の海賊版対策を担当する伊東氏は「英語の海賊版サイトからコピペをして、YouTube上に紙芝居のようにしてアップしている。集英社では、サイトに裁判をかけたり警察にお願いをしたりしていますが、多い時期でYouTubeだけで月に2万本の紙芝居動画が上がっていた。アップされて消しての連続になっている」とイタチごっこが続いている現状を明かす。

 さらにジャンプは毎週月曜日に発売されるが、一部の雑貨屋や食料品店などでは発売前に売られている問題も伊東氏が指摘。「警察と連携して、リストにあったお店をまわって、早売りを禁止してもらうように動いています。中には取り置きをしている人もいる。ジャンプの部数が減っているのは事実ですが、今でも200万部近く発行しており、木曜日ごろには配送を始めないといけない。なので店舗には金曜、土曜くらいには届くんです」と早売りが起きてしまっている理由を話す。

 続けて「罪になることではないので、根本的な対策が難しいんです。早く読みたいという読者の気持ちはわかるんですが、その中で誰か一人でもネットにばらまいてしまうとそれが全世界に広まってしまう。来週発売予定のものが金曜日にはYouTubeにアップされていて、もちろんパトロールはしていて月に200ほどのアカウント停止を確認していますが、撲滅するのは大変ですね」と地道な活動で早売り禁止を広げるとともに、読者の良識に期待する。

 籾山氏は『MANGA Plus』をスタートさせた理由のひとつに海賊版サイトの存在をあげる。「海賊版を可能性に、というのも変なんですが、最新話が日本と同時に読める国と地域は10から15ヶ国くらいしかなかったんです。ほとんでの国では海賊版でしか読むことができず、それをなんとかしたいというのも背景にあったんです」と説明する。

 『MANGA Plus』の効果について籾山氏は「コメント欄がありますので、国ごとの反応をきめ細かく把握することができるようになりました。ある作家さんもツイッターで海外のファンからリアルタイムでリプライがくるのがうれしいと話していましたし、英語やスペイン語圏の出版社からはかんげに声もいただいております」と高評価の中でスタートを切れたと話す。

 さらに、海外のある掲示板で「海賊版サイトで早く読んだ場合、感想をネットに書き込むのは正規版(MANGA Plus)で配信されてからの方が良いのではないか?」というスレッドが立っていたという。籾山氏は「正規コンテンツを応援したいや、MANGA Plusを応援したいという賛成意見と、公式を応援するけど2日、3日を待てないという反対意見もありました。意見としては反対派のほうが実は多かった。それでも以前はこういった議論すら起こらなかった。正規の場所で最新話を読むことができるようになり、意見が出るようになっただけでも、環境作りの面で前進できていると感じています」と話す。

 今後の展開について籾山氏は「タイでは海賊版サイトを英語で追っている読者が多い。もともとマンガ人気が高い国であるので、タイ語での配信も検討しています。すぐにはいかないですが、全世界で正規にジャンプのマンガが読める時代を作っていきたいです」と目標を掲げた。