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“だんごむし”ヒットでニーズ加速 生態学べる“カプセルレス”ガシャポン

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大ヒットガシャポン「だんごむし」(左)と、開発中のカプセルレスガシャポンの“スズメバチ”(右) (C)oricon ME inc.

 昨年、玩具メーカーのバンダイが発表したカプセルレスのガシャポン(R)「だんごむし」。実際のダンゴムシの10倍の大きさで、ガシャポン自販機から落ちてくる同商品のインパクトにSNSは騒然、その日のTwitterのトレンド1位「だんごむし」、2位「バンダイ」という大きな話題となった。その後、10万個売れれば大ヒットと呼ばれるカプセルトイ業界で、120万個以上を売り上げる大ヒットを記録。さらに今年の『東京おもちゃショー2019』では、バンダイが開発中のカプセルレスのガシャポン「スズメバチ」や「オオカマキリ」などを出展し、話題となった。同商品の開発担当である誉田恒之氏に、カプセルレストイの歴史、「だんごむし」のヒット、これからのカプセルトイシーンなどを聞いた。

【写真】120万個売れた“だんごむし”ガシャポン 裏側のクオリティにも衝撃

■“カプセルレス”ガシャポンが人気 カプセルのコスト高騰も背景に

 実は、誉田氏は虫が大の苦手だ。「原因はカマキリです。小学生の時にカマキリを捕まえたのですが、よく見ると頭がない。おそらくイタズラっ子に頭をもがれたのでしょうが、頭がないのに触ったら反撃してくるその姿を見て気持ち悪くなったんです」と誉田氏。そんな誉田氏が何故、「ダンゴムシ」を商品化しようと考えたのか。

「『機動戦士ガンダム』のザクの頭をモチーフにしたカプセルレスの『ザクヘッド』が180万個の大ヒットを記録したことを受け、お客様の求めるものが従来の小さいサイズのフィギュアではなく、価格が高くても大きなものを求めているのではないかと考えました。そこで、カプセルの一部が商品となるカプセルレスで、究極のものがないかと考えたときに、ダンゴムシは最初から球体になっている…「これだ!」と思ったのです」(誉田氏/以下同)

 2015年には、ドラえもんの頭がカプセルになっていて、中に体が入っており、組み立てると大きなフィギュアになる『カプキャラ ドラえもん』を発売。これが30万個以上の大ヒットとなり、その後は水平展開でサンリオやディズニーのキャラクターを手がけた。「本格的なカプセルレスシリーズの元祖となったのがこの『ドラえもん』。そこから『ザクヘッド』『だんごむし』へとつながったのです」。またカプセルレスの発想は、中国で製造されるカプセルのコストの高騰により、いかに安価で良いものをお客様へ届けるかという苦肉の策もあったとも言う。

■生物学的に研究し、リアルな生態の再現に成功「神の設計図の素晴らしさを感じた」

 実は「ダンゴムシ」企画は、最初は冗談半分だった。まず『ガンダム』といったキャラクター商品ではなく、ノンキャラクターとしても犬や猫のような人気の動物ではない。「ですが、社員とダンゴムシの話をしている際に、子どもは一度はダンゴムシを集めたことがあるのでは? と言うのです。もしかしたら子どもが一度はハマる時期があるのがダンゴムシなのではないかと考えました」

 考え始めたのは『ザクヘッド』が発売されるちょっと前の2015年の年末。だが売れた実績がないため単なるプレゼンでは到底通らなさそうな企画だった。誉田氏は実際に試作品を作ることに決めた。「ところが、どうやっても丸まらないのです。丸めようとすると背中の甲殻部分が重なって邪魔になるし、お腹部分も同様。“これは丸まらないのかな”と諦めそうになりました」

 しかしダンゴムシは実際に丸まる。そこで誉田氏は図鑑を見てダンゴムシの体の構造を真剣に研究した。「ダンゴムシの甲殻が、ひとつずつ幅が違うことを発見したのです。特に4枚目はかなり短く、実際にそれを再現したところ重ならずに丸まってくれた」。誉田氏は「生物学的に研究した結果、自然界が作った設計図の素晴らしさを感じられた」としみじみ語る。

 そうは言ってもやはりダンゴムシ。リアルに作ると気持ち悪くなりすぎてしまうので、様々な工夫を凝らした。まずは色。リアルなダンゴムシに近づけるとやはり嫌悪感のある雰囲気になってしまうため、おもちゃ感のある色を設定。またお腹の足が生えている部分や、口やお尻の部分もリアルに再現すると気持ち悪いため、ディティールを調整。

 これが発表された当時は「バンダイは一体何に技術を使っているの?」などとSNSで見事にバズった。「反応がこれだけ来るというのは、相当多くの人たちの心に刺さったのだろうと手応えを感じました」。結果、大ヒット商品に。しかもアンケートの結果、購買層の1/3が女性という想定外の事実も分かった。

■あえて再現が難しい昆虫を選択「他社ができないことに挑戦したい」

 この大ヒットを受け、誉田氏はシリーズ化に着手する。まず作ったのは沖縄やコスタリカなど温かい場所に生息する丸くなるコガネムシ「マンマルコガネ」。その他、丸くなる虫を探していったのだが、どれも「ダンゴムシ」と同じような形状をしており、「代わり映えがしない」と悩んだ。「そこで一旦、丸まる虫から離れようと。まずは元々丸い形状でペットとしても人気のあるカメを思いつき、そしてそもそも丸くないが、昆虫としても屈指の人気を誇るスズメバチやオオカマキリに着目しました」

 ここで誉田氏の情熱とバンダイの技術が炸裂する。例えばカメだと、単に頭や手足をスライドさせればいいところを、カメの甲羅の中にある実際の骨格を再現した。「カメの背骨から首にかけてはS字状になっており、それを利用してカメは首を伸び縮みさせられます。手足も肩甲骨が前後することで出たり引っ込めたりできる。これに着目したことで、単なるスライド方式では再現できない、歩行時のカメのリアルなポーズを再現することに成功したのです」

 スズメバチも同様だ。スズメバチは腰の部分がくびれており、ほぼ「く」の字に体を折り畳める。これは尻にある毒針を目前の敵に突き出すためで、この動きを再現した。オオカマキリも歩行時は鎌の先に細い足があり、歩行時はその部分を使用しているが、狩りの時には折りたたむ。その足を実際と同じように折り畳めるようにした。「これまでもカマキリの玩具がありましたが、ここまでリアルに再現しているのはバンダイが初ではないでしょうか」と誉田氏は胸を張る。

「スズメバチやカマキリは、カプセルレスにしたり、生態を再現する上でかなり難しい部類に入ります。お客様を驚かせるためなら、あえて難しいところから入っていこうという気持ちでテーマに選びました。生物の動きや造形美を再現する上で、バンダイの技術力を大いに発揮できる。ここまでのクオリティのものを手にとってもらいやすくカプセルで発売するということは、他社ではなかなか出来ない。そこに挑戦したいという思いはあります」

 「東京おもちゃショー2019」に出品した同商品の評判を受け、誉田氏は「今までは、いかに精巧にフィギュアを作るかという流れだったと思うんですが、見た目のリアリティよりも、その生態が分かるような可動式フィギュアにニーズを感じる」と話す。実際に『ダンゴムシの本』(DU Books)が再評価され5回の増刷。ガシャポン「だんごむし」も小学校の理科の先生が購入しているという情報もあり、そこには「知育」的な意味合いも含まれることが見て取れる。

 「一見、気持ち悪い虫も、よく見て研究すれば、その造形美や曲線美など新たな発見がある。印象だけで語ってはいけないという一例でもある」と誉田氏。今後、バンダイがどのような商品を開発していくのか、目が離せない。

(取材・文/衣輪晋一)