本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「○と□」 『魔法の輪』

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 魔法の四角い箱、テレビのない暮らしを始めて、六年程になる。先日、NHKの方が受信料の調査にいらした。使っていない旨を告げると「こんなご時世ですからラジオは聴いてくださいね」と言い残して帰っていった。ニュースの時間帯に合わせてラジオは聴いている。朝は五時半から。朝食に前後してラジオ体操をし、その後はニュースや天気予報、経済展望。昼は短歌や民謡に耳を傾ける日もある。夜の楽しみは、ラジオドラマや音楽。ラジオの良いところは、動きながら別のことができる点だ。あれこれ想像する楽しみもある。人気ドラマやアイドルの顔が全くわからなくなったが、友人たちが詳しく説明してくれるようになった。テレビを見ないことで、不要な情報の半分は耳にしないですんでいる気がする。

 もう一つの四角い魔法の箱はパソコン。今は手放せないが、これもいつか手放す日が来るだろう。必要なものだけに囲まれ、植物や動物に囲まれた環境で暮らすのが私の夢だ。幸福感は、土や緑に囲まれている時に湧いてくるから。

 「幸せってなんだろう?」

 オオカミに育てられた少年リックも、繰り返しつぶやく。リックは「魔法の輪」の中で、混血オオカミのグエンディと暮らしていた。「魔法の輪」とは、大きな町の公園にある聖域の森だ。人からは危険区域だと怖れられている。でも、そこは、「すべてのものが仲良く暮らせますように」と願いをかけられた流れ星が落ちた場所。だからこの丸い輪の森に逃げ込んだものは、誰も幸せに暮らしていた。リックも、グエンディもオランウータンのウルスーラも。

 ところが、ある日突然、「魔法の輪」は消えてしまう。ウルデリコ・トリィポンツォを先頭に、人間たちがブルドーザーで破壊してしまったのだ。グエンディは銃で撃たれ、リックはトリィポンツォに捕えられた。「人間はこの世の唯一の帝王。無秩序で汚い自然を焼きつくし、清潔でピカピカの世界を作りあげよう」。二重あごで三段腹のトリィポンツォは言う。「子どもたちを、クイズやコマーシャル、おやつやゲーム漬けにしよう。停電で十分間テレビが見られないだけで、子どもたちは原始的な遊びを始めてしまう。そうならないために、常にテレビをつけ体の中に残っている動物的なものを消してしまえ」。世界中の超高層ビル群の会長であり電気通信すべての会長であるモッローザ・ポルケッツァも豪語する。「自分の夢を各自が実現しようとしたら、世界は無秩序になってしまう。私の夢である『頭を空っぽにしてお腹を満たし、すべての緑を超高層ビルに変える』。たった一つのその夢だけを叶えるのだ」。......

 【メモ】「魔法の輪」タマーロ・あすなろ書房

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