本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「冒険」 『二年間の休暇』

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 住宅地のはずれに、子どもが秘密基地を作るのにうってつけの場所がある。住宅地と里山との境にある土手の斜面で、大人(敵)の目からは盲点のような場所だ。うちの娘も小学生の頃に、穴を掘って廃材を屋根にして……と随分、熱をあげて遊んでいた。隠れ家熱はすぐに冷め、その場所は何人かの子どもに引き継がれていった。散歩で通るたびに、新しい土が掘り起こされ板や棒がころがっていた。ここ数年、そんな基地遊びの痕跡も見られなくなった。大人の目が届かない場所での遊びが戒められているせいだろう。世相とはいえ、少し残念な気がする。

 秘密基地ごっこの楽しさは私にも覚えがある。通っていた小学校は、林に囲まれた古い木造校舎だった。校舎の床下に基地を作り「戦争ごっこ」を展開し、「宝物」を取ったり取られたりして遊んだ日々を思い出す。遊びは翌日翌々日と持ち越されて長期に及び、放課後が来るのがすごく待ち遠しかった。木の枝で防壁を作ったり、うちからいろいろなものを持ち寄って、基地をそれらしく整えるのはとても楽しかった。想像力に巣作りの本能が加わり、遊びを遊び以上のものに発展させていたように思う。

 その頃、夢中で読んでいたのは『ロビンソン・クルーソー』や『ガリバー旅行記』『コンチキ号漂流記』などの冒険物語だった。中でも、子どもが主人公の『十五少年漂流記』には心がときめいた。原題は『二年間の休暇』。空想科学小説の父と言われたジュール・ベルヌが六十歳の時に書いた少年少女向けの冒険小説だ。

 主人公は、ニュージーランドの寄宿学校で学ぶ八歳から十四歳までの十五人の少年たち。彼らは夏休みにニュージーランド一周の船旅をする予定で、前の晩に帆船スラウギ号に乗り込んだ。ところが、桟橋に繋がれていたロープがほどけてしまい、大人の乗務員がいないままスラウギ号は太平洋へと出航してしまう。やがて海は嵐に。少年たちは団結して波と闘うが、船は座礁。流れ着いた無人島で、少年たちは二年間の「休暇」を過ごす羽目になる……。

 【メモ】「二年間の休暇」ベルヌ・福音館書店

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