本の贈り物

■プロフィール
藤原あずみ イラストレーター。1958年長野県安曇野市生まれ。佐倉市在住。主な作品は「野あそびいっぱい 植物編」(萌文社、中山康夫著)、「お話とあそぼう」(一声社、末吉正子著)など。「第18回小さな童話大賞 山本容子賞」、「第9回ミツバチ絵本コンクール佳作」、「第48回千葉文学賞」など受賞。


「心の修復」 『だいくとおにろく』

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 花の季節を迎えた。

 風に混じる細かいものの襲来に怯えながらも、外に出て花を愛でたり、土に触ってみたくなる。花が開くように、人の心も外に向かって開いていく。だが、まだ放射能の数値が高い場所では、外遊びができない子供たちがたくさんいる。わくわくしながらも、素直に春を喜べない気持ちだ。

 語り部の友人、山中典子さんから、語りのボランティアで福島に出かけた時の話を聞かせてもらった。放射能を除く為に園庭の樹木が無残に切られていること。放射能の数値を示す測量計があちこちに設置され、住民はその数字に怯えながら暮らしていること。外遊びを制限されている子供たちが、熱心にお話に耳を傾けてくれたこと。中でも「大工と鬼六」を語った時のエピソードが、心に残った。

 予定のプログラムを終え、時間が余っていたので、山中さんは絵本でもお馴染みの「大工と鬼六」を語ったそうだ。もともとは遠野で語り継がれた昔話で、北欧から入ってきたという説もある骨太の物語だ。

 雨が降る度に、橋が流されてしまう暴れ川があった。橋を架けて欲しいと頼まれた大工が、どうしたものかと思案していると、鬼が現れて「おれが橋を架けてやろう。そのかわりおまえの目玉をよこせ」と言い出した。いい加減な返事をして別れたが、次の日、橋は半分架かっていた。困ったことになったと思っていると、次の日に橋は出来上がった。鬼はこう言った。「おれの名前を当てたら、目玉をとるのは許してやろう」。大工は恐ろしくなって山の中に逃げた。どんどん奥深く逃げて行くと、細い声の子守唄が聞こえてきた。「はーやくおにろくぁめだまぁもってこばぁええなあ」。それを聞いて、大工ははっと我に返った。次の日、大工が川へ行くと、ぶっくりと鬼が姿を見せた。「おれの名は何だ?」「がわたろうだ」「違う」「じゃあ、ごんごろう」「違う」……。最後に大工は大声で叫ぶ。「鬼六!」。そのとたん、鬼は「きいたな!」とくやしそうに言うなり、ぽかっと消えてなくなってしまった。

 「ぽかっと消えてなくなってしまった」。山中さんがそう締めくくったとたん、観衆の間から「わあっ」と歓声があがったそうだ。どのお話会でも、悪者が退治される場面では、聴き手はほっと胸をなでおろす。......

 【メモ】「だいくとおにろく」赤羽末吉画・福音館書店

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