房総通リズム春の観光特集2024

軍荼利山(73m)

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 JR外房線上総一ノ宮駅から歩いて10分で玉前(たまさき)神社に到着する。この神社は上総十二社祭りの勇壮な裸祭りで知られる。開基は平安時代(大同2年・西暦807年)と古く、当社伝承の「上総神楽」は県指定無形民俗文化財である。地元の鍛冶職人が鳥居の前で鉄製の農耕器具を販売していた。神社裏手の丸島竹材店は主人手作りの竹細工が所狭しに並んでいて、立ち寄ってみる価値がある。

 なし畑が点在する田園地帯に入ると間もなく右手に三島山・東漸寺がある。入口の案内板に「皇女和宮の籠」が保存されていると記されている。皇女和宮といえば、「孝明天皇の妹で公武合体推進のため、第14代将軍の徳川家茂に嫁いだ悲劇の女性だったな」と記憶を奮い起こし、それでは一見の価値有りと判断し拝観させてもらう。この由緒ある寺は、開山が慶長17年(西暦1612年)、曹洞宗の名刹である。

 さらに歩くと洞庭湖に到着。昼食の大休憩の後、軍荼利山を目指して湖の西側を緩慢に登り左折、右手にゴルフ場の芝生を俯瞰しながら溜池に出ると、軍荼利山東浪見寺山門にいたる。今日の山行で唯一の登りとも思える40メートルのコケむした狭い石の階段を汗かきながら3度登り、東浪見寺に辿り着く。周囲はうっそうとした常緑広葉樹に覆われ、スダジイ、カゴノキ、サカキカズラが自生する自然林。県の天然記念物に指定されている。この東浪見寺も開山は平安時代西暦806年ないし809年ごろと大変古く、本尊の「木造軍荼利明王立像」は県指定有形文化財である。毎年1月28日の東浪見寺のお祭りには本尊が一般公開される。ここから20分ほど歩くと東浪見(とらみ)駅である。 (諏訪吉春 記)