印旛沼で青春追懐

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 私は従弟グループに恵まれている。

 母の二番目の妹は三橋さとさんで、その叔母の次男が三橋忠雄さん、彼もまた従弟グループの近親だ。

 忠雄さんの愛妻は幸子さん、通称「サッちゃん」といって、これまた血すじを超えた仲良し従妹だ。

 この仲良し従弟夫婦が、佐倉から印旛沼方面に、車で連れていってくれることになった。

 私は自著「オレ、たそがれ」(千葉日報社刊)に、若き日の失財談『エビ天一本の心中』を載せている。概略を紹介してみる。

 私は家出していた十八歳時、一つ年上の女性と印旛沼で心中することになった。理由はバカげている。

 女性は佐倉市新町の裏長屋みたいなところに、母親と妹を抱えて住んでいて、そこに私が転がり込んだ。

 恋人である一つ年上の女性は、洋品店に勤め、ワイシャツのデザインや縫製に従事し、また店員として売り場に立つこともあり、それで私と知り合った。

 一家の働き手だった彼女は、給料日には決まって私を食堂に連れて行った。問題の日はそば屋で、私に天ぷらそばの「上」を取ってくれて、自分はかけそばにした。以下、本文を。

 「上天そばには、大きなエビが二本乗っていて、私はすぐに、一本を

 彼女のかけそばに乗せてやろうと思ったが、その前にトイレに立った」(略)

 トイレから戻り、エビを一本分けようとすると、すでに彼女が自分の手で分配してあった。

 瞬間、私は名状しがたいパニックに襲われ、気持ちがかみあわない二人は生きていたってしかたがない、死んじゃおう、ということになり、彼女も涙目をして印旛沼までついてきた。

 昔の印旛沼は暗く、泥深く、私はやみくもに飛び込んだが、すぐに岸辺の草木にしがみつき、運よく釣り人の助力を得た。・・・