民話ドラマ15年

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 NHK関係の空増(そらます)さんから電話をもらい、私はあがってしまい、たしかセクションを聞いたはずなのに耳に入らず、ただNHKの関係者とだけ意識した。

 若いころ私は赤面恐怖症で、医者にかかったこともあるが、高齢になってからもあがり性が抜けない。

 それでも、のぼせがおさまって、会話を整理するうち、取材を申し込まれた経緯に行き着く。

 ケーブルテレビ「あいチャンネル」で、郷土の市原民話をドラマ化して15年目、その長寿を賞して取り上げてくれるらしい。

 まず稲毛区小仲台の酒井宅を訪れ、机に向かう私を取材するという。さあたいへん。家の中はすっかりごみ箱状態になっている。

 さっそく行動を起こさなければならないが、私の出足は鈍い。このさい分別して、捨てるものは捨て、保存するものは保存、と思考を巡らしても、行動の一歩が踏み出せない。

 私は自分の寸法で推量してみる。潔癖症ときれい好きとは本性が違うのだろうか。親が危ぶむほどに不潔を踈(うと)んだ私が、いつの間にかごみの中央に納まっている。きれい好きがせっせと周囲をきれいにしている間も、私はごみの中で呆然(ぼうぜん)としている。要するに横着な潔癖症である。

 ともあれ、分別しないまでもごみ袋を移動し、主役となる机の回りをさっぱりさせなければならない。心房細動の心臓をドキドキさせながら、手に余る荷物を持って2階に上がる。

 翌日、午前10時に空増さんが来訪された。指示を受けて、私は机に向かい、書き溜めた民話原稿をひろげたり、民話及びエッセー集など著作本について説明したり、取材の本旨に関しての質問に答えたりした。

 我(わ)が家が終わると表へ出て、市原市佐是の光福褝寺へと向かう。明治の宮大工桐谷久治の墓を訪ね、ご住職の狩野興道師からお話をうかがう。...