詩集『花のやうに』

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 千葉日報文化部気付でお手紙をいただいた。

 気付便でも直通便でも、毀誉褒貶(きよほうへん)便はよくもらうが、こんどいただいたお手紙には密度の濃さがあった。

 まず私の文章を、軽妙洒脱(けいみょうしゃだつ)な人物評・世相観察とほめてくれて、さらに、ご自分のことを書かれる時の、やや照れを含んだ筆致が特に心に残ります……と、またまたこちらが照れるようなことを言ってくれる。

 お手紙の主は長生村在住の詩人・早瀬岳氏で、私は面識こそないが、早瀬氏の詩集『命あるものよ』(東京文芸館刊)を拝読し、感銘を受けている。

 じつはこんど届いたお手紙も、愛らしい詩集『花のやうに』の一冊に抱かれていて、詩の一編ごとに添えられる季節の花はオールカラーで、味読するうち花畑に居るような感覚にとらわれるが、詩編がリードし、また尻押しをするのは、人生の歩みのようだ。

 空は空のままに 海は海のままに 山は山のままに 花は花のままに 木は木のままに 風は風のままに(『花は花のままに』より)

 この詩編には、人間は人間のままに、自分は自分のままに、という部分が吸収されているのだろう。

 過ぎ去った時間の中でも まだ来ぬ時間の中でも 人は生きてゐない 生きものはすべて 存在するものはすべて 今と言ふ瞬間の中だけに在り 生きてゐる(詩編『花の心のやうに』より)

 過去を偲(しの)んでみても、未来に縋(すが)ってみても、そこに確かな人間の存在はない。今という瞬間をだいじに生きるのが人生だ、という指針。

 タイトル『花のやうに』以下、本文にも古語の用字が見られ、筆者の心理的意図が伝わる。・・・