高齢からの出版

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 私は文章塾の世話焼きをやっていて、依頼があれば出版の手伝いもする。

 講師役の私も高齢だが、塾生はさらに年長で、80歳を超える生徒も多い。

 本を出すにしても、若者のように賞をねらうわけではなく、来し方行く末を素材として確かめ、見極める筆致である。

 百桂さんの『ジャンボン川』(千葉日報社刊)は、著者が「にとな幼稚園」の理事長先生ということから、童話風味のエッセーといった感じで、表紙も挿絵も園児が担当している。

 テーマとなった『ジャンボン川』は、幼時の思い出話から始まる。

 「ちゃっこい川だったよね」「すっぽんぽんで泳いで、人が来ると、橋の下に隠れたっけね」「ジャンボン川にはタナゴやメダカ、それにしじみもいたね」

 --ジャンボンとは、この地でいう葬式のことだった。そしてジャンボン川は葬式のけがれを流す川ということで、使用後の葬具を流したが…(略)

 幼児らは泳ぎながら、山の手にちょうちんの行列を見たとかで、きつねの嫁入りの話などに興じる。

 水野邦重さんの『越智のつれづれ』(千葉日報社刊)は、生い立った新義州での少年期が、淡々としてよどみない筆致で描出されていく。

 友情、転校、性の悩み、敗戦による日朝の立ち場の逆転、家族問題、帰国問題等々、さりげない平明文で流れていく。

 後半は一転して、千葉市越智町の自然に抱かれ、奥様と寄り添い、おだやかな暮らしを慈しむ。

 玉野千恵子さん著『人生歌つづり』は、第1章から第5章まで、年令別区分けがピタッとはまる。

 第1章は小学時代。放送局の合唱で『牧場の朝』のソロを歌うはずが、警察官である父の転勤で断念。声がしわがれるまで泣いたその泣き笑いが、第2章『愛しき人よ』、第3章『旅に出て』、第4章『ちょっぴり社会派』、第5章『老いのど真ん中を往く』に共鳴していく。・・・