デルタの国の小説

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 文学同人誌「槇」は、千葉日報の文芸(小説・エッセー・童話・詩・短歌・俳句)を主に、何らかの賞を得た執筆者グループにより永続されている。

 遠山あき氏に続き、グループ代表となられた三好洋氏から、著書「デルタの国バングラデシュ」(一歩会出版部)を贈られた。

 お会いしたことはなかったが、巻頭言によりお人柄に触れる思いだった。

 -六十の手習いの文筆は未熟ですが、私も八十代になり、これ以上の先送りはできません。

 三好洋氏の謙虚な言辞に私は惹(ひ)かれる。私も謙虚というより、ただの臆病な引っ込み思案だったので、氏の「文筆は未熟ですが…」に心癒やされる。

 ただ三好氏の文筆は、本文に入るとためらいなく、意図するままに描出していく健筆である。

 第4章『晃夫とエドの割礼-バリの少年エドの割礼とミーナ』を紹介させてもらう

 主な登場人物は田中晃夫25歳、ジャイカ(国際協力事業団)協力隊員。

 マンナン45歳、バリの一集落のボスであり、かつて日本に留学し、日本女性を妻にしている。

 孤児のエド12歳は、孤児同士のミーナ9歳のために割礼を受けたいと願っている。実は晃夫隊員も包茎に悩み、恋人との結婚をためらっている。

 ボスのマンナンは、棒で地面に正常陰茎と包茎の形を描き、話し始める。

 -割礼は男の生殖器の包皮の一部を切り取る行事で、ユダヤ教徒は誕生八日目に行なうように義務づけられている。モスリム(イスラム教徒)は義務づけられていないが、習慣になっている。割礼は、儀式や信仰の問題だけでなく、健康的な意味もある。この国の男は包茎が多いから、割礼で包皮を切り取った方がいい。・・・