目の当たりの人間愛

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 人間愛とはいいもんだ。

 うわさというより風の便りに引かされ、ガイドを得て、その人間愛の里を訪ねる。市原市島野・金川原の地だった。

 訪問宅は、この地の名家なのですぐに知れた。近くまで行くと、門前で盛んに手招きしているおじさんがいた。おじさんといっても青年を思わせ、元気はつらつだった。実はこのおじさんが今回の主人公「庄平さん」ということだった。

 見上げるほどの邸宅に招引(しょういん)され、戸主の山口美智子さんに初対面する。皇后様と同名であることに恐縮するその人となりを感受する。

 庄平さんはその場から農作業に戻り、話の始終は美智子さんから聞く。

 庄平さんは他家の子だという。3歳時に高熱に浮かされ、それが原因で耳が聞こえなくなったとか。

 庄平さんは5人の子どもの中の上から4番目だったが、実父が病死した後、新しい父親が入り込み、種変わりの子ども3人が生まれて計8人。

 耳が聞こえず、そのせいで言葉も話せず、庄平さんは仲間外れの状況にあり、義父からは三食も制限される始末だった。

 その様子を見兼ねたのが近所の山口統正さんで、話を通して庄平さんを預かった。統正さんは心ゆくまで食べさせ、子どもらしい表情を取り戻させた。庄平少年の16歳時だった。......